「自分の考えや打ち合わせ内容をその場で図解する。このテクニックがあれば、会議、ブレスト、プレゼンが劇的に変わる。考える力と伝える力が見違えるようにアップする」
こう語るのは、アートディレクター日高由美子氏。「ITエンジニア本大賞2021」のビジネス書部門グランプリを獲得した『なんでも図解ーー絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術』の著者だ。「フレームワーク」や「キレイな絵」を一切排除し、瞬間的なアウトプット力の向上を徹底的に追求するワークショップ、「地獄のお絵描き道場」を10年以上続けている。複雑なことをシンプルに、難しい内容をわかりやすく。絵心ゼロの人であっても、「その場で」「なんでも」図解する力が身につくと評判になり、募集をかけてもすぐキャンセル待ちに。
本連載では「絵心ゼロの人であっても、伝わる図を瞬時に書くためのテクニック」を伝える。

コロナ禍のアルコール依存症治療、「断酒」と「減酒」の違いを【1枚の図】にしてみた!

いま注目されている「減酒」とは?

 緊急事態宣言解除による飲食店の酒類提供開始や、東京五輪会場内での酒類販売見送りの決定など、お酒にまつわる話題が多いように感じます。

 在宅勤務が増え、飲み会のルールやお酒との付き合い方も大きく変化しています。アルコール依存症を治療する方法として、「減酒」に注目が集まっています。断酒との違い、その背景を図解しました。

 今回はNHK クローズアップ現代+の「あなたは大丈夫?コロナ禍のアルコール依存」などはじめ、複数の記事を参考にしました。

【参考記事】※タイトルクリックで記事に飛びます。
・NHK クローズアップ現代+「あなたは大丈夫?コロナ禍のアルコール依存」

・日本アルコール・アディクション医学会:新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き 7ページ参照

・NHK 読むらじる:酒をやめられない人に…「減酒のススメ」

e-ヘルスネット(厚生労働省)酒量を減らすための方法

時事メディカル:変わるアルコール依存症の治療「減酒」で回復目指す

これより図解を開始する!

 今回は、複数の資料から「断酒」と「減酒」の違いと減酒の流れを図解していきます。まずは「減酒」からです。「あなたは大丈夫? コロナ禍のアルコール依存」を参考にしました。

==ここから引用
お酒を止めなくてもいい? “減酒”という新選択
今回取材したアルコール依存症患者の方の多くが、当初は病院に行くのをためらったと言います。理由は「病院に行くと、断酒しなくてはならなくなる」「たしかに飲酒量は増えているけれど、そこまで大きな問題でもないから、このままで大丈夫」などが主でした。これらの発言が表す通り、国内には実に100万人以上のアルコール依存症患者がいるとされていますが、実際に治療を受ける患者は全体の5%ほどに過ぎないと言います。専門家の間では、この“治療ギャップ”をどう埋めるか、どうやって病院に来てもらうかが長年の課題でした。
そんな中で新たに登場したのが、“減酒”という治療法。これまでの治療では、“抗酒剤(お酒を飲むと体調が悪くなる薬)”を使って、完全な断酒を目指すことが主流でした。しかし2019年、ナルメフェンという“減酒薬”が認可され、「お酒を完全にはやめず、減酒薬で酒量を調節してうまく付き合っていく」という選択肢が生まれたのです。このナルメフェン、ヨーロッパでは2013年に承認されており、現在世界30ヵ国以上で使用されています。(この減酒治療は「飲み始めてからの期間が短い人」や「ある程度飲酒コントロールができる人」に有効で、飲みだすと完全にコントロールを失う重度の方は、やはり断酒治療が必要となりますのでご注意ください。)
(中略)
 減酒治療は、下記のような流れで進みます。
① 医師と相談し、本人の飲酒や健康問題などを評価する
② それに基づき、患者本人が「目標とする飲酒量」を決める
③ 毎日の生活で、飲酒量を記録する。その際、必要に応じて減酒薬を服用する
④ 記録を持参して、定期的に通院・カウンセリングを受ける
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 また「対象者」については、日本アルコール・アディクション医学会:「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き」(P7)を参考にしました。

==以下引用
4.アルコール依存症の治療選択
4.1 断酒を選択すべき患者(図1、フローチャート中の①)
以下に示す患者については断酒を選択すべきです。これらの患者への対応が難しい場合には専門医療機関に相談してください
(参照;6.専門医療機関との連携)。
断酒を選択すべきであっても断酒に応じない患者には、患者の状態を
説明したうえで、断酒が望ましいことを伝え、同意が得られるように試みます。
断酒を目標とした治療を選択すべき患者
・入院による治療が必要な患者
・飲酒に伴って生じる問題が重篤で社会・家庭生活が困難な患者
・臓器障害が重篤で飲酒により生命に危機があるような患者
・現在、緊急の治療を要するアルコール離脱症状(幻覚、けいれん、振戦な
ど)のある患者
4.2 飲酒量低減を治療目標とする患者(図1、フローチャート中の②)
軽症の依存症で明確な合併症を有しないケースで、患者が断酒を望む場合や断酒を必要とするその他の事情がある場合を除き、飲酒量低減が治療目標になります。
断酒を目標とした治療を選択すべき患者であっても、断酒の同意が得られない場合は、治療からドロップアウトすることを避けるために、一時的に飲酒量低減も選択できます。飲酒量低減がうまくいかない場合には断酒に切り替えます。
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 また、減酒が注目される背景については、「変わるアルコール依存症の治療「減酒」で回復目指す」を参考にしました

==以下引用
▽減酒で受診しやすく
強烈な飲酒欲求により、飲酒の量やタイミングの制御ができなくなるアルコール依存症(以下、依存症)。国内で推定107万人いるとされる依存症者のうち、受診している人はわずか5万人にとどまる。
受診率が低い理由について、湯本医師は「医療機関を受診することには『お酒をやめさせられる』『アル中の烙印(らくいん)を押される』といった負のイメージがあり、受診のハードルは高い」と指摘する。その上で、「お酒を断つのではなく、飲酒量を減らす治療を許容することによって、受診の抵抗感を減らすのが減酒治療の狙いの一つです。これまで断酒に成功しなかった人が、減酒により治療を継続し、最終的に断酒に至る可能性が期待されます」と話す。
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 資料を読み、内容と図解のバランス、構成を考えます。

コロナ禍のアルコール依存症治療、「断酒」と「減酒」の違いを【1枚の図】にしてみた!

 どう配置すれば一目で伝わるか、ざっくりとで構わないので何枚でもアイデアを書き出すこと。文字は自分にわかる程度で大丈夫です。このプロセスが、後々の図解の仕上がりを左右します。

図解の要素を要約し、箇条書きにする

 資料をもとに比較の要素を揃え、特徴の説明をまとめていきます。このときに「どんな“図解の型”が使えそうか」「言葉の要約(図に収まる文字量か、内容に沿っているか)」を考えながら箇条書きにします。

■断酒=酒量ゼロ
断酒を目標とした治療を選択すべき患者(対象者)
・入院治療が必要
・飲酒問題が重篤
・臓器障害が重篤
・離脱症状がある

■減酒=飲酒量低減が治療目標
飲酒量低減を治療目標とする患者(対象者)
・離脱症状や臓器障害が重篤でない
・軽症の依存症
・合併症を有しない

■減酒の特徴として
飲酒を完全にはやめず目標を立ててセーブ
具体的な例として
1日の酒量を決める
飲まない日を決める
飲酒日記をつける

■「減酒」が注目される背景について
・「断酒」ありきと考えると…治療のハードルが高く感じる
実際に治療を受ける患者は全体の5%
(国内で依存症者は推定107万人いるとされる)

■「減酒」という選択があると.…節酒・治療に取り組みやすい
受診の抵抗感が減る
治療を継続
最終的に断酒へ

■減酒の流れ
・医師と相談
医師と相談し、本人の飲酒や健康問題などを評価

・目標設定
患者本人が「目標とする飲酒量」を決定

・飲酒量記録
毎日の生活で、飲酒量を記録必要に応じて減酒薬を服用する

・通院
記録を持参して、定期的に通院・カウンセリング最終的には断酒へ

ざっと図解してみる。改善できるかチェック!

 これらの要素をざっと図解します。下図を見てください。

コロナ禍のアルコール依存症治療、「断酒」と「減酒」の違いを【1枚の図】にしてみた!

 ブロックごとに、改善点を洗い出していきましょう。

【A】について

コロナ禍のアルコール依存症治療、「断酒」と「減酒」の違いを【1枚の図】にしてみた!

 それぞれの「対象者」の説明の部分に人アイコンを入れた方がわかりやすくなりそうです。また、「酒量ゼロ」「目標に沿って酒量を減らす」という部分も、文字だけの表現のため差が一目でわかりにくい印象です。

【B】について

コロナ禍のアルコール依存症治療、「断酒」と「減酒」の違いを【1枚の図】にしてみた!

 上段で円グラフを使っていますが、「治療を受けている割合が非常に少ない」ことの視覚的なインパクトはまだ弱いと感じます。また、右下の「治療に取り組みやすい」という説明の箇所は、3つの要素の関係を囲んだ文字と細い矢印で表していますが、一体感がないためパラパラと左から右に流れている印象があります。

【C】について

コロナ禍のアルコール依存症治療、「断酒」と「減酒」の違いを【1枚の図】にしてみた!

 内容は間違いではありませんが、矢印が整理されていないため、どこが始まりなのか、見る人を迷わせてしまい、この治療の流れが伝わりにくい状態です。

 わかりやすい図に修正していきましょう!