「自分の考えや打ち合わせ内容をその場で図解する。このテクニックがあれば、会議、ブレスト、プレゼンが劇的に変わる。考える力と伝える力が見違えるようにアップする」
こう語るのは、アートディレクター日高由美子氏。「ITエンジニア本大賞2021」のビジネス書部門グランプリを獲得した『なんでも図解ーー絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術』の著者だ。「フレームワーク」や「キレイな絵」を一切排除し、瞬間的なアウトプット力の向上を徹底的に追求するワークショップ、「地獄のお絵描き道場」を10年以上続けている。複雑なことをシンプルに、難しい内容をわかりやすく。絵心ゼロの人であっても、「その場で」「なんでも」図解する力が身につくと評判になり、募集をかけてもすぐキャンセル待ちに。
本連載では「絵心ゼロの人であっても、伝わる図を瞬時に書くためのテクニック」を伝える。
「ぼったくり男爵」と言われた理由は?
「ぼったくり男爵」、Twitterやオンラインのニュースで見かけた、インパクトのあるそのネーミングはどこから出たのでしょうか。
米ワシントン・ポストが電子版のコラムでバッハ会長を「ぼったくり男爵」と表現。新型コロナウイルス禍で開催を強要していると主張し、日本政府に対し東京五輪を中止することを勧める内容を記事にしていました。
記事は「IOCは収益を得るための施設建設やイベント開催を義務付け、収益のほとんどを自分たちのものにし、費用は全て開催国に押し付けている」と書いています。
そこで、『開催都市契約2020』(東京都オリンピック・パラリンピック準備局のサイトにアップ)を読んでみると、確かに驚きの内容。あまりにも不平等という声も上がっているようです。
この開催都市契約(日本語訳)は全部で81ページありますが、その一部を抜粋して図解してみました。
●あまりにも不平等なIOCと東京都の「開催都市契約」
https://bit.ly/3y1pK46
●開催都市契約2020(東京都オリンピック・パラリンピック準備局)
https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/taikaijyunbi/taikai/hcc/index.html
●開催都市契約(日本語訳)(899 KB)
https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/hostcitycontract-JP.pdf
●ワシントンポスト(原文)
https://www.washingtonpost.com/sports/2021/05/05/japan-ioc-olympic-contract/
●「日本に東京五輪中止促す 米ワシントン・ポスト」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE063CK0W1A500C2000000/
※契約内容では開催国側の表現が「開催都市、NOC、およびOCOG」と表記されいますが、「開催都市→東京都、NOC→JOC OCOG→オリンピック組織委員会」をそれぞれ指しています。図解では契約文章での表現に沿って表記しています。
長文を図解するための「準備体操」
長めの文章からキーワードを抜き出しグルーピングし図解する流れを、今回はiPadのSplit Viewを活用して図解しています。下図を見てください。
今回はPDF(テキスト)を左側に、「メモ」を右側に配置しました(同じアプリで違う画面を同時に表示する事もできます)。
※情報元である開催都市契約のPDFは「PDF expert」というアプリで開いています。
図解開始!
では、始めていきましょう。まずは、開催都市契約の抜粋を見てください。
a)
開催都市、NOC、およびOCOGによる補償:開催都市、NOC、およびOCOGは、IOC、IOCテレビジョン・アンド・マーケティング・サービスSA(※訳注IOCの子会社)、第54条a)項にて詳細が定められるオリンピック放送機構(OBO)、およびその役員、メンバー、理事、従業員、コンサルタント、代理人、弁護士、受託者((IOC、各国の国内オリンピック委員会、およびオリンピック大会組織委員会の)スポンサー、サプライヤー、ライセンシー、および放送機関など)とその他の代表者(以下、「IOC被補償者」という)を、以下の事項に起因して、直接または間接を問わず、IOC(またはIOC被補償者)が被るすべての損害、申し立て、訴訟、損失、費用、支出(外部弁護士の報酬と費用を含む)、および/またはあらゆる性質の責任(人または財産への被害を含む)(これには、IOC(またはIOC被補償者)が第三者(オリンピックのスポンサー、サプライヤー、ライセンシー、放送機関などを含むが、これらには限定されない)に支払うべきすべての費用、収益の喪失および損害賠償を含む)(以下、総称して「本件申し立て」という)から、常に補償し、防御し、かつ害が及ばないようにし、また免責する。
(開催都市契約13ページより)
では、図解していきましょう
①文章(PDF)を開き、内容を読み込む
このままでは図にすべき要素がわかりにくく、心も折れてしまいます。マーカーで要素をチェックして洗い出しましよう。
「登場人物」(誰が)と、「何を」「どうする」をチェック。そして、「同じくくりに分類できるか」「似たような語句だが意味も同じか?」などを意識して、情報を色分けします。
②iPadのSplit Viewで2つの項目を開く。
画面左を「PDF」、右を「メモ」(iPad標準装備)にします。
「メモ」の面積を少し広めに調節すると下書きが書きやすくなります。
また、メモアプリの右上のアイコン(…)をタップ、さらに「罫線と方眼」をタップし、方眼を利用すると図が書きやすくなります。ブラッシュアップの際には特におすすめです。
③右側の「メモ」に、大まかな配置や内容を考えながら下書きしていきます。
図解の「骨格」を考える
まずは文章の大きな構成をイメージして下書きします。ここでは細かな要素よりまず大きな流れを意識します。
要素を分類する
左のPDFで整理した内容(キーワード)を囲み、図を構成する要素にしてグルーピングします。
整理されてきましたね。上図の①と②と③、どの形にまとめるのがいいでしょうか?
ポイントは「配置の吟味」です。フレームワークを活用するとラクに図解できます。