韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える自尊感情回復レッスン』というタイトルの本だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「ゆううつ感に悩んでいる」など、人々が抱える悩みのほとんどは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。
本書の日本版が、ついに7月13日に刊行となる。その刊行を記念して、本書の一部を特別に紹介する。今回は、「自尊感情を落とさないために、仕事で悩んだら考えたいこと」について触れた内容を紹介していこう。

自尊感情の専門家が教える「今の職場でいいのか?」と悩みすぎて人生をダメにしないコツPhoto: Adobe Stock

職場、仕事、夢は分けて考える

 多くの人は仕事による悩みを抱え、自尊感情を下げてしまっています。ただし、たいていの人は業務そのものより、職場の状況によって自尊感情が左右されています。先ほど紹介した「自尊感情が傷つけられる職種」の人たちにとっては、いっそう職場の状況が重要です。

 このとき絶対に忘れてはならないのが、職場とは“ロマン”ではなく“現実”だということです。私の患者たちを見ていても、職場に幻想を抱いている人が非常に多く見受けられます。

 彼らが思い描いている職場とは、夢を実現できる場所、自分のエゴを満足させる場所、美しい人間ドラマがある場所という幻想的なものです。断言しますが、それはドラマか広告コピーの世界です。

 少しきつい言い方になりますが、職場というのは私たちを利用して苦しめ、苛立たせるところです。社員を効率良く稼働させて、その対価として給料を与えて丸くおさめているようなものです。だから、どうか職場で自尊感情をすり減らさないでください。

 私がみなさんに強調しておきたいのは、職場、仕事、夢は明確に分けて考えてくださいということです。仕事には満足していても、職場に不満がある場合もあります。逆に、仕事は満足とは言い切れないけれど、職場には満足しているという場合もあるでしょう。

 職場が人生のすべてではありません。職場が気に入らないからといって、自分の人生まで不満だらけにしてしまってはいけません。24時間すべてを大切にしてください。仕事後の時間も大切な人生であり、休日も大事なあなたの時間です。

 仕事中に受けたストレスだけでなく、やり残した仕事まで家に持ち帰り、家で悩む必要があるのでしょうか。私たちはつい職場に多くの意味を付与しがちですが、たまにはそこから離れて頭を完全にからっぽにする時間も必要です。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。