航空大学校航空大学校の『学校案内』より

コロナ禍でパイロットの「卵」たちはどのような困難に立ち向かっているのか。パイロットの登竜門である航空大学校の2021年度入試について、さまざまな「異変」が起きている。受験生側と航大側、双方にどんな苦労があったのか。(パイロット予備校代表 谷 誠)

航空大学校の入試は
特殊検査と長期間が特徴

 コロナ禍で航空業界が“低空飛行”する中、パイロットを目指す人たちはどのような困難に立ち向かっているのか――本稿では、2021年度入試を例とした、「航空大学校の入試におけるコロナ禍の影響」を明らかにします。

 航空大学校とは、ひとことで言えば、日本で唯一の公的なパイロット養成機関です。これまで3500人以上のパイロットが誕生しています。

 日本におけるパイロット養成の方法は、大きく三つに分けられます。

(1)エアラインの自社養成
(2)私立大学のフライトコース
(3)航空大学校

 一つ目の自社養成は、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)などのエアラインが、大学新卒者等を対象にパイロット訓練生として採用します。採用後は給与をもらいながら訓練できるので、人気が高いことが特徴です。その倍率は約100倍とも言われています。

 二つ目の私立大学のフライトコースは、大学在学中に訓練を実施します。フライト訓練は、学校により国内と国外に分かれますが、学費が高いことが特徴です。学校によって幅はありますが、およそ1600万~2600万円(学費のみ)ほどかかります。

 三つ目の航空大学校は、独立行政法人として国が運営するパイロット養成機関です。倍率は約10倍、費用負担も約350万円(学費のみ)と、現実的なところが特徴です。

 この三つ目の航空大学校の入試について、コロナ禍でさまざまな「異変」が起きたことは、世間であまり知られていません。

 もちろんコロナ禍にあっては、どのような分野でも、何らかの変更が発生しています。ただ、航大受験は一般的な大学受験と異なり、複数の「特殊な検査」があります。加えて、試験だけで半年間と、試験期間が非常に長いのが特徴です。従来の試験のストレスに加えて、不確定な状況を過ごした受験生たちは、例年にない苦労がありました。

 同様に、航大側も「苦渋の決断」を迫られました。将来の機長育成に関わる重要事項についてです。いったい、双方にどんな苦労があったのでしょうか。