岸田文雄・前自民党政調会長ダイヤモンド編集部の単独インタビューに答える岸田文雄・前自民党政調会長 Photo by Kazutoshi Sumitomo

自民党総裁選挙に立候補する岸田文雄前政調会長が、ダイヤモンド編集部の単独インタビューに応じた。岸田氏は令和版「所得倍増計画」を掲げ、「分配を強化し、アベノミクスを進化させる」と力を込める。岸田流「所得倍増計画」とは何か。本人が全貌を明らかにした。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

「成長」と「分配」で所得倍増計画
中間層への支援を強化

――令和版「所得倍増計画」とは何ですか。

 キーワードは「成長」と「分配」です。成長の果実をできるだけ分配し、一部の所得を上げるのではなく、国民全体の所得を広く押し上げていきます。

 昭和30年代の所得倍増計画は、皆が貧しい中、広く国民所得が上がったため、消費が喚起され、経済の好循環を生み出しました。

 私が掲げる令和版「所得倍増計画」の主役は民間企業です。企業に成長の果実を賃上げ等でしっかり回してもらう。また、サプライチェーンの中で、中小零細企業にも適切に分配されることを目指します。そうしたことを達成するために、大きな仕組みを構築したいと考えています。

 もちろん民間の分配だけでなく、税制などによる公的な分配も実施していきますが、まずは民間で分配を進めてもらいます。

 なぜ分配か。これは中間層への支援を強化しなければならないためです。今の中間層にとって、住居費や教育費が大きな負担となっています。格差が広がり、子どもの貧困などが問題になる中で、新型コロナウイルスの感染拡大が決定打となりました。

 成長に加え、分配にも目配りをしなければ、格差はさらに広がってしまいます。格差が広がれば、経済だけでなく社会や政治も不安定になります。例えば、米国では格差の拡大による分断が社会問題となり、連邦議会に暴徒が乱入する事態が起きました。格差の拡大は日本でもこうしたことを引き起こしかねないでしょう。

 富裕層が消費をけん引すればよいという指摘もありますが、富裕層だけでは消費の押し上げには限界があります。国民全体の所得が増えてこそ、消費拡大につながるのです。もちろん低成長が続く現代において、所得を「2倍」にするのは、現実的とはいえません。ただ、「倍増」というメッセージを打ち出すことで、企業や国民の意識を変えていきたいと考えています。

――自民党が「分配」を強く打ち出すのは珍しいのではないでしょうか。