「学ばない社員」が多い日本企業が考えるべき、真に必要な対策働き方改革が進められる中でも、キャリアを転換させていくために自ら学んでいる人は、わずか3割しかいない
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仕事のために自ら
学んでいる人はわずか3割

 2017年に安倍政権が提示した「働き方改革実行計画」。その中でライフステージに合った仕事の仕方を選択しにくかったり、中高年になると再就職しにくかったりするなど、「単線型の日本のキャリアパス」が課題に挙げられました。これを変えていくためには、キャリアチェンジしやすい社会の実現が重要となります。

 2017年9月に発足した人生100年時代構想会議は、2018年6月に「人づくり革命 基本構想」を発表しました。そこでは、キャリアアップ・キャリアチェンジにつながる社会を作るために、学校を卒業した後もスキルを身に付ける(アップデートする)ための社会人の学び直し(リカレント教育)の重要性が説かれ、産学連携による社会人の学び直しを支援する方針が打ち出されました。

 では、キャリアを転換させていくための仕事にかかわる学びを、人々はどれだけ行っているのでしょうか。リクルートワークス研究所の調査では、仕事のために自ら学んでいる人は、わずか3割しかいないことがわかっています。

 なぜ学ばないのか、その理由を明らかにするために、既存の調査や研究を参考に、「忙しい」「費用負担が重い」「既に知識や技術が十分で必要ない」「方法がみつからない」などの選択肢を用意しましたが、最も高かった理由は「あてはまるものはない」(51.2%)でした。(社会人の学びをテーマにした報告書「どうすれば人は学ぶのか―『社会人の学び』を解析する―」2018年より)

 もちろん、想像が及ばなかったという理由もあったのでしょうが、この事実は「学ばない理由なんて考えたこともない」という気持ちの表れともいえます。言い換えると、「学ぶ人に学ぶ理由はあっても、学ばない人に学ばない理由などない」ということでしょう。

時間があっても学ばない?
自ら学ぶための誘発条件とは

 連載第2回で見たように、2016年以降の長時間労働の是正に向けた動きは盛んであり、労働時間は年々短縮しています。しかし、実際は労働時間が減っても、積極的に学ぶ人は増えていないのです(図表1参照)。時間的な余裕が、自ら学ぶための必要条件ではあっても十分条件ではないならば、自ら学ぶための誘発条件とは何でしょうか。