2018年の報告書「どうすれば人は学ぶのか―『社会人の学び』を解析する―」では、企業が積極的に仕事にかかわるさまざまな「学び機会」をつくることで、個人は自ら学ぶようになることが明らかになりました。企業の提供する「学び機会」とは、たとえば仕事を通じて知識や技術を身に付けるOJT、仕事を離れて研修などで学ぶOff-JT、そして仕事の幅が広がるなどのレベルアップを指します。
では2018年以降、仕事にかかわる学びの状況はどのように変化しているのでしょうか。
働き方改革の推進で
「学習・訓練」の水準は上昇
連載第1回で紹介した「Works Index」では、仕事にかかわる学びとなる仕事の難易度、OJT、Off-JT、そして自己啓発をもとに、学びの状態を把握するIndexIV「学習・訓練」を設けて調査・分析しています。
IndexIV「学習・訓練」の2016年から2020年までの動きを見ると、2016年の31.8ptから2018年には32.5pt、2019年には33.1ptと、2年にわたって上昇しています。しかし、2020年には前年比▲2.1ptと大きく低下しました(図表2参照)。Indexの水準は、0~100ptの間の値をとり、100ptに近づくほど、理想的な状態になっていることを示しています。
2018年と2019年の上昇の背景には、前述した通り、社会人の学び直し(リカレント教育)の重要性が説かれ、産学連携による社会人の学び直しを支援する取り組みが行われたことがあります。
2020年はすべてのIndicatorを見ても軒並み減少しています。その詳細を見ていくと、仕事の難易度が下がった割合は増え、さまざまな仕事を担当する機会が減りました(図表3参照)。OJTでは「上司や先輩等から指導を受けてはいないが、彼ら(他の人)の仕事ぶりを観察することで新しい知識や技術を身に付ける学び」(図表3では「観察する」)が大きく減少しています。また、研修などのOff-JTの機会も失われていることがわかります。
順調に進んでいた学びの動きは、なぜ2020年に停滞したのでしょうか。