「新冷戦」勃発は杞憂?ロシアがウクライナ侵攻で窮地に追いやられる理由Photo:picture alliance/gettyimages

ロシアが、ウクライナ東部を実効支配する親ロ派勢力・自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認し、ウクライナへの軍事侵攻に踏み切った。欧米は、世界的な送金システムの要である国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを排除するなど、強力な経済制裁の発動を発表している。東西冷戦終結後、米国や欧州が築いてきた国際秩序は崩壊し、欧米や日本など自由民主主義陣営とロシアの対立は決定的になり「新冷戦」が始まった――と多くの識者が、このような見方をしている。だが、それは正しいのだろうか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

地政学的にロシアvs欧米・NATOを考える

 ロシアの軍事施設への空爆は、ウクライナ全土に広がり、首都キエフにもロシアの軍用車両が入り、銃撃戦が起きているという。
 
 ウラジーミル・プーチン大統領は、「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つだ。わが国を攻撃すれば壊滅し、悲惨な結果になることに間違いない」と強調し、繰り返し核兵器使用の可能性に言及して国際社会を威嚇している。

 これまで、プーチン大統領は「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的大惨事」と主張してきた。旧ソ連の影響圏を復活させる「大国ロシア」復権の野望があるという。ウクライナを制圧し、次は旧ソ連構成国だったエストニア、ラトビア、リトアニアの「バルト3国」、そして旧共産圏だった東欧諸国と、旧ソ連の影響圏だった国を取り戻そうとしているという。

 この連載では、プーチン大統領の「大国ロシア」は幻想だと主張してきた(本連載第142回)。現在起きていることが何なのかを、地政学的に検証して正確に理解する必要がある。まず、次のページの地図を見てもらいたい。