技術力がなく資源が支え、脆弱なロシア経済

 さらに、ロシア経済の脆弱な体質を指摘しておきたい。

 ロシアは旧ソ連時代の軍需産業のような高度な技術力を失っている。モノを作る技術力がなく、石油・天然ガスを単純に輸出するだけだ。その価格の下落は経済力低下に直結してしまうのだ。

 実際、2008年のリーマンショック後や、2014年のウクライナ危機の後の経済制裁、その後の長期的な原油・ガス価格の下落は、ロシア経済に深刻なダメージを与えてきた。輸出による利益が減少、通貨ルーブルが暴落し、石油・天然ガス関係企業の開発投資がストップ。アルミ、銅、石炭、鉄鋼、石油化学、自動車などの産業で生産縮小や工場閉鎖が起きたのだ(第142回・p2)。

 現在、世界の原油・ガス価格は高騰している。長期的な価格低迷から脱して、ロシア経済は一息つき、安定している。それが、「欧米の経済制裁は効果がない」と、プーチン大統領を強気にさせている。

 しかし、原油・ガス価格の決定権を究極的に持つのは、「シェール革命」で世界最大級の産油・産ガス国に返り咲いた米国だということを忘れてはならない(第173回)。米国がシェールオイル・ガスを増産し、石油・ガス価格が急落すれば、ロシア経済はひとたまりもない。

 バイデン政権は、民主党を支持する環境関連団体との関係もあり、シェール増産には慎重だ。だが、ロシアの生殺与奪の権利を有しているのは間違いない。

 そして、SWIFTからロシアを排除する制裁措置である。