夏祭りPhoto:kanzilyou/gettyimages

世界一高いタワーの建設も、家の建て替えも、革新的な車の開発も、夏休みの家族旅行も、全て「プロジェクト」だ。目標へ向けてプロジェクトを着実に推進していくためのフレームワークが「プロジェクトマネジメント」(PM)であり、PMを学んでおくと、あらゆるプロジェクトに応用することができる。今回、『童話でわかるプロジェクトマネジメント』(秀和システム)など数多くのPM関連の著書を持つ飯田剛弘氏、PMI日本支部でPMの研究会やセミナー活動に携わっている奥田智洋氏と國枝善信氏の3名による共著から、これからPMを学ぼうとする人でも理解しやすいよう、身の回りにありそうなできごとと照らし合わせながら、PMの「はじめの一歩」をわかりやすく解説する。

※本稿は書籍『PMBOKはじめの一歩 スッキリわかるプロジェクトマネジメントの基本』(翔泳社)の内容を抜粋・一部再編集しています。

今年もやることになった夏まつり
えっ!わたしが取り仕切るの?

 夏子さんの住んでいる花火町では、毎年8月に、にぎやかな夏まつりが開催されています。ある日、夏子さんの家に、いつもお世話になっている自治会長さんがやってきました。

自治会長「夏子さん、こんにちは!」
夏子さん「自治会長さん、こんにちは。今日は暑いですね」
自治会長「そうだね。今日は、ちょっと夏子さんに頼みたいことがあってねえ」
夏子さん「はい」
自治会長「今年の夏まつりなんだけども、実行委員長をお願いできないかね?」

 花火町は、昔からある商店街や新しいスーパーのチェーン店などが立ち並ぶ、とても活気がある町です。古くからその町に住む人のほかに、県外から移り住んできた人もいて、賑わいのある地域です。しかし、花火町でも他の地域同様に、高齢化が進むことに危機感を持っていました。

自治会長「4月の自治会で、今年の夏まつりは、若い人に盛り上げてもらおうという話になってね。そこで、夏子さんに実行委員長をお願いできないかという流れになってね」
夏子さん「うーん、わたしは実行委員にもなったことがないのに、そんな大役が務まりますか?」

自治会長「大丈夫、大丈夫!みんなで手伝うからさあ!」
夏子さん「はい……では…やらせて……いただきます…」
自治会長「そうかそうか!夏子さんが引き受けてくれて助かったよ!ありがとう!」

 2時間後――。

夏子さん「お母さん、おかえり。自治会長さんがさっき家に来られて、夏まつりの実行委員長をやってほしいと頼まれ、やることになっちゃった!」
夏子の母「えっ! 実行委員長を引き受けたの?大丈夫なの?」
夏子さん「うーん……『みんな助けてくれる』って言われたし……」
夏子の母「みんなって誰なの?夏まつりって当日だけの話じゃないでしょう?」

 夏子さんは、お母さんの話を聞いて、急に不安になってきました。「夏まつりを開催するために、何を、いつまでに決めないといけないのか」「誰とやりとりして、進めていけばいいのか」など、よくわかっていませんでした。本当に問題なく行けるのでしょうか……。

夏子の母「前もって確認したいこと、いくつか思い浮かぶでしょ?」
夏子さん「うん。いくつかは思いつくけど……」
夏子の母「明日、自治会長さんに確認しておいで!あと、裏のおじいさんも色々知っているから相談してみたら?」
夏子さん「うん。そうしてみる!」
夏子の母「やるって決めたんだから、頑張ってやりなさいね。こういうのもいい経験だから」

 夏子さんは翌日、自治会長さんと裏のおじいさんのところに行くことにしました。そもそも夏まつりという「プロジェクト」を開始する前には、どういったことをしておくべきでしょうか。