世界一高いタワーの建設も、家の建て替えも、革新的な車の開発も、夏休みの家族旅行も、全て「プロジェクト」だ。目標へ向けてプロジェクトを着実に推進していくためのフレームワークが「プロジェクトマネジメント」(PM)であり、PMを学んでおくと、あらゆるプロジェクトに応用することができる。今回、『童話でわかるプロジェクトマネジメント』(秀和システム)など数多くのPM関連の著書を持つ飯田剛弘氏、PMI日本支部でPMの研究会やセミナー活動に携わっている奥田智洋氏と國枝善信氏の3名による共著から、これからPMを学ぼうとする人でも理解しやすいよう、身の回りにありそうなできごとと照らし合わせながら、PMの「はじめの一歩」をわかりやすく解説する。
いつまでたっても
不具合がなくならない!
建三さんは、生まれたときから住み続けている今の自宅が大好きです。楽しかったことや辛かったことなど、たくさんの思い出が詰まっています。その家も建ててから30年ほど経ち、ところどころ不具合が出るようになりました。そんな中、兄の浩次さんが、何年かぶりに海外赴任から日本に帰ってきました。
建三さん「兄さんお帰り!この家に帰ってくるのは久しぶりだね!」
浩次さん「そうだな。仕事も忙しくて、なかなか帰ってこられなかったからな。みんな、変わりない?」
建三さん「父さんも母さんも元気にしているよ。庭の畑で野菜作りも頑張ってるしね」
浩次さん「あー、それは安心したよ」
久しぶりの再会で話が弾む兄弟でした。そして弟の建三さんは、3日前にあった出来事を浩次さんに話し始めました。
建三さん「この前、仕事から帰ってきたら、キッチンの床がびしょ濡れで!」
浩次さん「そんなことがあったんだ。誰か水でもこぼした?」
建三さん「最初はそう思って、雑巾で水をふき取ったんだけど、父さんも母さんも覚えがないらしいんだよね」
浩次さん「あ、そう。じゃあ猫か?コップの水でもこぼした?」
建三さん「そう思ったんだけど、コップも落ちていなかったから、違うと思うなあ……」
浩次さん「まあ、水がこぼれることもある。気にすることはない!」
建三さん「うん、そうだね」
そのときは、建三さんも兄の浩次さんも、それほど深刻なことになっているとは思ってもみませんでした。そして、その1週間後のある日の朝。
浩次さん「建三!ちょっと来て!」
建三さん「兄さん、どうしたの?」
浩次さん「キッチンの床がまた濡れているぞ!」
建三さん「えーっ!本当だ!この前よりも水の量が多い気がするなあ……」
浩次さん「とにかくふき取っておかないと!床のフローリングがだめになるよ!」
建三さん「そうだね。すぐふき取ろう!」
建三さんと浩次さんは、慌てて床の水を雑巾でふき取りました。一段落つくと、二人はお茶休憩をして、何もなかったかのようにテレビを見始めました。さて、これでキッチンの床に水がこぼれている問題は解決されたのでしょうか?
案の定、またその月末にも同じことが起きて、建三さんと浩次さんは、ようやく詳しい原因を調べることにしました。その原因を知った二人はビックリです。