みんなが当事者!
「プロジェクト」を開始するということ

 毎年実施している夏まつりでも、マニュアル通りに進めれば、開催できるというものではありません。実施内容や参加しているメンバーが多少変わることはありますし、年ごとにテーマがあったりもします。では、今年の夏まつりはどうでしょうか。

 自治会の人たちは、「若い人に盛り上げてほしい」ということを理由に夏子さんに実行委員長の依頼をしました。おそらく、自治会の中では、これまでの夏まつりに対して何か課題を持っていて、今回の夏まつりに対して、何かしら期待を寄せていることがあるのではないでしょうか。

【プロジェクトで生まれる価値】

 夏子さんがもし、今年の夏まつりも例年同様のやり方で実施した場合、自治会の人たちからは「成功した夏まつりだった!」と思ってもらえるでしょうか。たぶん今回のケースでは難しいでしょう。

「夏まつりを実施すること」がプロジェクトのゴールではないからです。自治会の人たちの課題を解決すること、期待を達成することが、今回の夏まつりの成功の姿であり、そこにプロジェクトとしての「価値」が生まれるのです。

【プロジェクトを開始するということ】

 一人で行うプロジェクトもありますが、一般的には、今回の夏まつりのように、多くの人がプロジェクトに関係します。そして、その関係者の間で、プロジェクトを始めるために共通認識を持ってもらうことが重要です。そうすることで、プロジェクトは進みやすくなります。

 では、どういったポイントを確認しておいたほうが良いでしょうか。

関係者内で認識の齟齬をなくす
「BOSCAR」フレームワーク

 いろいろな観点がありますが、ここではどのような観点で整理するかという例として、「BOSCAR」(ボスカー)のフレームワークをご紹介します。BOSCARは、それぞれ以下の単語の頭文字です。

Background(背景):プロジェクトを実施することになった経緯
Objective(目的):プロジェクトを実施する理由
Scope(範囲):プロジェクトの範囲、または範囲外
Constraint(制約):自分たちだけでは勝手に変更できない条件
Assumption(前提):自分たちで想定や仮説を置いた条件
Report(成果):プロジェクトとしての成果物やゴールの姿

 BOSCARを使ってプロジェクトの内容を整理すると、プロジェクト関係者内で認識の齟齬(違い)がなくなります。BOSCARのフレームワークを使って、夏祭りプロジェクトを少し整理してみます。

 ここ数年、夏まつりに参加する若い人の数が減ってきています。そのため、若い実行委員を中心に若者向きの企画を行ない、若い人の参加を増やすことが、自治会の人たちの想い(背景と目的)かもしれません。

 どういった人に夏まつりに参加してもらうのか(範囲)を決めていかなければなりません。また、他の町の夏まつりの開催日との関係で、夏まつりの日程が決まってしまっている(制約)かもしれません。さらに、夏祭りの会場は既に確保されている(前提)かもしれません。そして、若い人も盛り上がっている祭り(成果)とはどういったものかも考えなければなりません。

 夏子さんは自治会長や裏のおじいさんとこういった話ができたでしょうか?夏子さんの苦労はまだまだ続きます……。