「吐くのがこわい」に悩むあなたへ

 はじめまして、山口健太と申します。

 あなたは「嘔吐恐怖症」という言葉を聞いたことがありますか? 詳しくは本書の中でお伝えしますので、ここでは簡単に説明しますが、嘔吐恐怖症は「気持ち悪くなることや、吐くことに対して、健全ではないレベルでの不安や恐怖を感じ、日常生活に大きな支障が出る精神疾患」のことです。

「嘔吐恐怖症なんて初めて聞いた」という方もいると思いますが、一般的にも認知度が低い病気だと思います。また、嘔吐恐怖症に関する論文の少なさから、臨床現場での治療方法もまだまだ発展途上にあるとも言えるでしょう。

 それ故に克服方法などがわからず、たくさんの方が悩まれています。そして当事者はもちろん、周りの家族なども「やらない方がいいこと(長期化に繋がってしまうこと)」を、知らず知らずのうちにやってしまうことがあります。また、知らないことにより「他人に対して発症のきっかけを与えてしまう可能性」もあります。

 たとえば、あなたが親の立場だったとして、いきなり子どもが吐いてしまったら、なんと声をかけるでしょうか?

 余裕があるときであれば「気持ち悪くなっちゃったんだね、大丈夫?」などと優しく声をかけることができるかもしれません。しかし、余裕がなくてバタバタしているときであれば、突然のことに「なんで吐いちゃったの!」と強く言ってしまうこともあるかもしれません。ですが、その強く放った一言が子どもにとっては「嘔吐への健全ではないレベルでの不安や恐怖」へと繋がることもあるのです。

 ですから、当事者の方にはもちろん、親の立場にある方や、保育士さんや学校の先生など「子どもと接する機会が多いお仕事」をされている方などにも、認知が広がればよいなと感じています。

 私はちょうどこの本を書いている5年前くらいから、何かに導かれるように、この症状に悩むたくさんの方の相談に乗ることになりました。また、カウンセリングや認知行動療法をベースにした改善プログラムを制作し、延べ1000人を超える多くの方の症状改善をサポートしてきました。

 もちろん、まだまだ発展途上のところもあるのですが、本書を通して、それらの改善方法をお伝えすることで、少しでも悩んでいる方のお力になれればと思っています。

 本書は前半で「嘔吐恐怖症とはどんなものなのか」について、後半に進むにつれて「改善するための具体的な方法」を書いています。一般の当事者の方を想定し執筆しましたので、病気に対する知識があまりなくても読みやすいように、専門用語を最低限に抑えてわかりやすく説明しています。

 本書があなたにとって人生を変える大きなきっかけになりますように。

イラスト/イマイマキ