東海大学湘南キャンパスの近隣に大手ハウスメーカーが合計645室もの学生向け物件を建設中だ。空室を抱えるアパートも少なくないこのエリアで、大手の参入は地元の大家さんにとって脅威となっている。賃貸経営では市場環境の急変など、予想外の出来事も付き物だ。では、そうした変化に左右されないためには何が必要なのだろうか? 独自の視点と方法論で、自らも賃貸経営をする「一芸物件」専門家の筆者がアドバイスする。(一芸物件専門家/キャリアコンサルタント 井上敬仁)
突然の大手ハウスメーカー参入!
大学側は大歓迎でも地元大家にはピンチ
神奈川県平塚市の東海大学湘南キャンパスは、55万平方メートルもの広大な敷地に16学部と大学院が置かれ、約2万人の学生が学んでいます。緑に恵まれ、時間がゆっくりと流れるこの街に、賃貸経営をする大家さんには見過ごすことのできないニュースが入ってきました。
ある大手の住宅メーカーが、2024年に149室、25年に496室、合計645室の学生向け住宅を供給するというのです。前者は元パチンコ店、後者は元スーパー銭湯の広い跡地を転用して建てられるもので、いずれもアパートではなくマンションです。
建物と設備は一定以上のグレードになると予想されます。さらに、496室のほうはワンフロアを丸ごと学習スペースなどの共用部に充てるぜいたくな設計がなされていると聞きました。しかも、どちらも学生や親御さんに人気の食事サービス付き。管理面・セキュリティー面などを含め、スケールメリットを生かした質の高い生活環境が提供されることと思われます。
少子化の今、学生の確保は大学にとって急務です。こうした大型物件ができることは、大学側は大歓迎だろうと思います。「うちのキャンパス周りは住環境も充実している」と言えますからね。
東海大はスポーツが盛んですが、ある有力な選手を推薦入学で獲得しようとしたときに、「寮がボロいという理由で入学を断られてしまった」といううわさが大家さんの間でまことしやかに伝えられています。このうわさの真偽はさておき、ブランド力もある大手の新築物件は、初めから“勝ち組”として投入されるようなものですよね。地元の大家さんにとってはまさに脅威です。
そもそも、東海大湘南キャンパスのある平塚市エリアの賃貸市場は、空室率が18.4%とやや高く、苦戦している賃貸物件は少なくありません。この非常時を、地元の学生アパート・オーナーはどのように乗り切っていけば良いのでしょうか?