オンライン入試で問われる公平性と試験の性質
帰国生入試は、基本的な英語力、エッセーの事前提出やペーパー試験の実施、グループディスカッション、個人面接・口頭試問といったメニューで行われることが多い。
基本的な英語力は、TOEFLのような外部試験のスコアを活用できるものの、この時期にそうした試験を受けられるかが問題となる。
決められた構造(導入、例示、結論といった論旨の展開など)で与えられたトピックスに関する英作文を行うのがエッセーで、内容のオリジナリティーや語彙力などが試される。オンラインで実施した場合、横に親や指南役がいてアシストしたりしないよう事前にルールを徹底する必要がある。
6~8人程度で行われるグループディスカッションは、授業での議論に積極的に加わることができるかという資質が問われる。最近は塾の指導もあって、控室にいる間に声を掛け合い仲良くなってから臨むという技も発揮されることがあるが、オンラインではそうはいかない。海外にいる子どもの場合、時差も考慮しなければならず、公平な条件で行うことができるかが悩ましい。
個人面接・口頭試問は最も重要で、エッセーを人の助けを借りて作成した場合でも、問ううちに実態が分かってくるものなのだが、受験者が多いとオンラインで対応しきれるかが問題になる。帰国生入試の時期には普通に授業も行われており、そちらに支障をきたしかねないからだ。
公平性をいかに担保するのか、というルールづくりはこのように非常に大切になる。
どのような授業をしていくのかを考えた上で、学習に必要な力を問う、という意味で、受験生にその資格を問う側面を強く打ち出せば、英語力に加えて、志望動機や学びを重ねてきた教養の度合いも確認したい、となる。これはポストコロナの教育のあり方を示唆するものになるのかもしれない。
難関・上位校の入試は落とすための選抜性が前面に出る。その点、中堅校以下では、学びのかたちを問うことで多様な生徒を集めることもできる。入試問題は学校から未来の生徒に向けたメッセージという側面が強く発揮されるわけだ。
2021年は国の要請に応えてオンライン入試になるかもしれない。入試の出題内容に関する説明会は例年秋に行われているが、そうした点も踏まえて、6~7月に各校で予定されている最初の入試説明会が極めて注目されることになる。中学受験生もその保護者も、オンライン受験という新しい仕組みへの対応を考えておく必要が出てきそうだ。