高橋真実(たかはし・まみ)
森上教育研究所アソシエイト

 

アジルコンサルティング代表。学校広報・改革のコンサルタントとして活動中。1963年福島生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、メーカー勤務、外資系コンサルティング会社を経て独立。

 

 

女子校の持つ“社会では得難い機能”

――鵜崎先生にとって、女子校の魅力とは何でしょう。

鵜崎 1000人も女子生徒が並んでいる、一般の社会とはちょっと違った世界で、特別の性格を持った集団です。心の内を仲間に話すことができる、社会の中では得難い気付きや新しいことを知るという機能を女子校は果たしています。

――女子学院もキリスト教主義の学校ですから、修養会などでもそういう機能が発揮されていることかと思います。

鵜崎 入学時の女子の成長は早いので、中1や中2でも、自分自身の内面に目を向けて、自分の生き方やまじめな課題に取り組むことができます。中高の6年間、相手の話を直接聞き、自分とは違う考えに触れ、たくさん話し合いをします。これはディベートとは少し異なります。相手を納得させるのではなく、互いに意見を披露していく。講演もたくさん聴き、本当に考える機会がたくさんあると思います。

――男女の成長のプロセスは違うというお話がありました。男子校はいかがでしょう。

梶取 私は武蔵中高の経験しかありませんが、入学したばかりの男子は幼く、中1=小7です。男の子は、いろんなつまらないことをします。女子はまず、そういうばかばかしいことはしません。

 女子校は狭い、閉ざされた世界と言われますが、それは違います。中高6年間を女子のみで過ごす経験は一期一会のものです。明日には忘れてしまうような雑談をすることがすごく大事だと思っています。

 私は校長室の扉を開いているので、生徒の雑談が聞こえてきます。「私は雨女かどうか」について、30分間議論していたりします(笑)。学校ですから授業も大切ですが、たわいのない話ができる、触れ合いの場ということが貴重だと思います。

――確かに、女子校というのは安心して素の自分をさらけ出せる環境ですね。女子校の中での女子教育として感じるものは何でしょう。

梶取 まだわずかの経験ですが、女子校では、カリスマ的な生徒が引っ張っていくというよりも、小さな力が集まって、雑談の中で一つの形を仕上げて、大きなことを成し遂げていくように見えます。どの生徒にもそれぞれ役割があって、学校の中のどこかに属している。それが女子教育の中で培われているように思います。

――望まれるリーダー像は時代と共に変わるものだと思います。女子学院は初代院長の矢嶋楫子(かじこ)、大妻は「明治生まれのアントレプレナー」と私が呼んでいるリーダーである大妻コタカが学校を創っていきました。

鵜崎 女子学院は日本にある一番古い女子校の一つです。創設に関わった宣教師は、学校がどうあるべきか、残された言葉が、日常的に出てきます。理念が繰り返し語られることで、生徒は学んでいきます。

 何々をしなければいけない、と言っているわけではありません。「この学校にいることの意味、学ぶことの意味を考えてほしい」と生徒は代々問い続けられてきました。常に考え、自分の一歩を踏み出していく。そういう姿勢が150年以上続いています。伝統校と言われますが、学校はこうありますよ、というのを示し続けています。