北京五輪が終了した。日本選手の活躍に手に汗握ったのはもちろんだが、同時によくも悪くも中国の「大国化」を強烈に意識させられた。日本はこの隣国とどう付き合っていくべきなのかを考えさせられた日々であった。今日は、日中関係について思うことを書いてみたい。
「靖国問題」は
日中関係最大の懸案事項か
小泉政権当時、「靖国問題が日中間の最大の懸案事項」というのが、いわば「通説」となっていた。ここから議論を始めてみたい。もし、この「通説」が正しいなら、日中関係とは、実に「幸せな二国間関係」だと思うからだ。
世界中には戦争状態や休戦状態の二国間関係が少なくなく、これらでは日常的に人が死ぬ緊張感がある。一方、「靖国問題」のために誰も死ぬことはない。誰も経済的に困窮することもない。「靖国問題が最大の懸案事項」というのは、日中間には大きな問題がないと言っているに等しいのだ。
小泉政権で日中関係は
むしろ進展した
実際、小泉政権時には、日中関係は「靖国問題」の裏で様々な進展があった。例えば、経済関係では、日中貿易総額が日米のそれを上回った。日中間の人的交流も拡大し続け、2005年には約417万人に達した。中国における在留邦人数も10万人を突破し、日本に居住する中国籍の外国人登録者数も50万人を超えた。
もちろん、日中間には東シナ海の資源開発問題など様々な懸案事項があったが、定期的な事務レベル協議はきちんと継続された。議員外交や、民間人の交流も途切れることなく活発に行われていた。
小泉首相の靖国神社参拝のたびに、中国政府側は過剰に反応し、首脳会談を一方的に拒絶した。これに対して小泉首相は動じることなく淡々としていた。しかし中国は、日本経済が中国への輸出に大きく依存しているにもかかわらず、日本を経済制裁するような実効性ある措置を取れなかった。つまり、「靖国問題」を巡っては、実は日本より中国の方が弱い立場にあったと言える。