野地秩嘉
第十九回
高円寺の食堂兼居酒屋「福福」。秋田料理を標榜しているだけあって、きりたんぽ鍋(2000円)、ハタハタ寿し、いぶりがっこ、秋田しょっつるカマンベール(いずれも500円)などがメニューに載っている。店主の竹内真由美は「うちのは秋田そのままの味です」と、どんと胸を叩く。

第十八回
双葉は半世紀近く前にまず豆腐店として開業した。亡くなった主人が人形町にある豆腐店「双葉」からのれん分けで創業したのである。現在、食堂部門で働いているのは80歳の田中ナカさんと長女の高橋久美子さんのふたりだ。隣にある豆腐部門はナカさんと長男がやっている。

第十七回
金町製麺は鮮魚の刺身、たこワサビ、トマトのバジルソースとアンチョビ、豚ロースと玉ねぎのスタミナ炒め、豚バラチャーシューの炙りなどが並ぶ居酒屋だ。ただ「製麺」と店名に付けているのは伊達ではない。中華そばの麺を小麦粉から手打ちしている。

第十六回
亀有駅の北口には警察官の姿をした両津勘吉像、南口には祭り半纏を着た同じく両さんの銅像がある。そして、定食屋、常盤仙食堂があるのは北口で、駅から歩いて3分の場所だ。

第十五回
お好み焼きの店「瀧」は大井町にある。駅を降りて、イトーヨーカドーの裏、商店街の外れにある。値段はリーズナブル。一皿の量は多い。

第十四回
東十条の駅を降りて約2分の場所にあるのが、とんかつの「みのや」だ。安い。うまい。とんかつがでかい。三拍子揃った庶民による庶民のためのとんかつ屋である。

第十三回
「よもだそば」は立ち食いの店で、店舗はいまのところ日本橋と銀座のふたつだけだ。店舗の外観、店内インテリア、従業員の様子……、いずれも標準的な立ち食いそば屋で、見かけは平凡。しかし、業容は非凡そのものである。

第十二回
日本人は『カレーは二日目の方がおいしい』と言うでしょう。大連でも二日目の残り餃子を焼いたのが好きという人がいますよ」。ふるさとの味、餃子について話をしてくれたのは神山玲さん。本名は玲玲。りんりんと読む。新橋駅近くの中華料理店「家園菜」他4店のオーナーママだ。

第十一回
これまで、わたしは角打ちや立ち飲み店を敬遠していた。ところが、最近、遅まきながら、本気で探せば「腰を据えて飲める立ち飲み」、「料理のおいしい立ち飲み」があることがわかった。たとえば、新橋にある「東京立ち飲みバル」がそうだ。

第十回
豊野丼は天丼屋だ。天ぷら屋ではない。天丼はある。しかし、天ぷら定食はない。席はカウンターだけだ。狭い店だけれど、人気は高い。営業時間中はつねに店の前に行列ができている。並んでいる人を見ると、体格のいい若者がほとんどだ。

第九回
韓国料理の店「伽耶の家(かやのいえ)」は浦和駅から歩いて2分の場所にある。料理、焼肉ともに値段はリーズナブルだ。銀座、六本木、麻布十番の焼き肉店に比べると、値段は15パーセントほど安く、量は1.2倍はある。焼肉、韓国料理を食べるならば、都内の店よりも浦和を目指すべきかもしれない。

第八回
多け乃食堂は昭和15年にできた。築地市場のすぐ近くにある食堂で、客の主体は市場で働く人、そして、近隣のサラリーマンである。出しているものは市場で仕入れた鮮魚を使った料理、加えて食堂の定番とも言える玉子丼、カツ丼などだ。

第七回
もつ焼き屋「ウッチャン」は新宿西口の通称「思い出横丁」にある。カウンターの店で、午後3時過ぎから開店。30分も経たないうちに満席になる。従業員は「すみません、なるべく奥の方に詰めてください」と混雑したバスの運転手みたいな言葉を発しながら、頭を下げる。

第六回
丸一食堂は川崎駅からバスで10分の「四つ角商店街」にある。京浜工業地帯のど真ん中で、勤勉な工場労働者が働く町だ。同店の営業開始は朝の6時30分。早い。開店と同時に行ってみた。すると、すでにひとり先客がいた。彼は「生ビールください。それとハム玉子ね」と言った。繰り返すが朝の6時半である。

第五回
蔡菜食堂で出すのは上海の家庭料理だ。同地出身のふたり、蔡才生(サイゼイセイ)と王梅玉(オウマイヨク)夫妻が子どもの頃に食べていた、懐かしい味のおかずが並んでいる。上海の人なら誰もが「ああ、うちでもよく作る」という料理だ。

第四回
レストラン「ラグー」は人形町にある昔ながらの洋食屋だ。ラグーの特徴はなんといっても朝の8時から営業していることだ。大衆食堂では朝から店を開けているところは多い。しかし、本格的洋食屋でこの時間からやっているのは市場の店を別にすればラグーくらいではないか。

第三回
大衆のための店「下総屋食堂」は両国国技館の近所、旧安田庭園の隣にある。戦前からの建物で、コンクリートの土間にテーブルが7卓ある。午前11時前ならば空いている。おかずが並ぶ棚のなかから、厚揚げの煮物を取り、「マカロニサラダとビールください」というような注文をする。

第二回
居酒屋「かね将」は五反田界隈でもっとも流行っている店だろう。午後4時30分が開店だけれど、主人の金子章治(あだ名は「かねしょう」)が午後4時にシャッターを開けたら、客が入ってくる。いずれもひとり客だ。

第一回
市民酒場、常盤木は横浜の雪見橋にある。場所は高島町と桜木町の間。掃部山(かもんやま)公園に向かう坂の途中だ。要するに居酒屋なのだけれど、のれんにあるように、「市民酒場」と謳っている。

第4回(最終回)
今年も新米が出揃い、やはり新米は旨い!と喜んでいる方も多いだろうこの時期、改めてお米の美味しさとは何かを考えます。偶然、玄米を贈ってもらった著者の経験を基に、お米について、知っておいて損はない基礎知識をお届けします。
