二日目のカレー、二日目の水餃子
「大連では餃子を食べるときは家族みんなで作ります。もちろん水餃子。たくさん作って、残ったものは冷蔵庫へ入れておく。次の朝、中華鍋に油を引いて、皮がパリッとするまで焼いて食べます。
日本人は『カレーは二日目の方がおいしい』と言うでしょう。大連でも二日目の残り餃子を焼いたのが好きという人がいますよ」。
ふるさとの味、餃子について話をしてくれたのは神山玲さん。本名は玲玲。りんりんと読む。新橋駅近くの中華料理店「家園菜」他4店のオーナーママだ。
家園菜では中国の東北地方と四川料理を出す。客が必ず頼むのは水餃子と焼き餃子だ。餃子の具はバラエティに富んでいる。白菜、ニラ、ねぎ、セロリ、トマト、レモンなど。もちろん主役は豚のひき肉で、白菜などの副菜は選ぶことができる。
レモンの蒸し餃子はここでしか食べられない。酸っぱいけれど、さわやかな味だ。
大連生まれのりんりんさんは30年前、日本人の男性と結婚して来日した。しかし、上の子が7歳、下の子が5歳の時に離婚する。
「どうやって食べていけばいいのか」と悩んだ後、彼女は小さな餃子店を開いた。そして、少しずつ、店を広げ、また、店の数を増やしていった。
以来、17年、男女ふたりの子どもは無事、成人した。上の男の子はミュージシャン志望、下の女の子は法律事務所勤務。りんりんさんの後を継ごうという子はいない。
「それでいいの。うちの店は料理を一生懸命、作りたい人に譲ります。それがお客さんのためだから」
中国からやってきた通称「新橋のおしん」、りんりんさんは毎日、夜遅くまで、自分がやっている店をぜんぶ回り、味のチェックを欠かさない。