
デービッド・アトキンソン
参院選を前に物価高対策で消費税減税を求める大合唱だが、インフレ圧力を強め、苦境にある低所得層の負担を重くするだけだ。インフレには賃上げで対応するのが世界では常道だ。中小企業も全体で見れば利益水準は高く、最低賃金を100円引き上げる方が低所得層の負担軽減の点ではるかに有効だ。

社会保障給付の増大は財政だけでなく働く人たちの生活を困窮させ、経済を停滞させている最大の要因であり、石破新政権にとって社会保障問題の解決は最重要課題だ。負担軽減だけでなく生産性向上の支援や賃上げ促進策で労働分配率を高めるなど、現役世代の支援に最優先で取り組むべきだ。

東京都の合計特殊出生率が0.99と1を切るなど、少子化が止まらないが、少子化の原因とされるものには「若い世代は所得が低いから子どもをつくらない」などという因果関係がはっきりしない“俗説”がある。少子化対策は急務だが、原因をきちんと分析しないと事態はより悪化しかねない。

#14
給料が安くて損をするのは、労働者だけではない。企業の生産性が上がらなくなり、経済全体に甚大な影響を及ぼす。にもかかわらず日本には、最低賃金引き上げに反対している財界首脳がいる。政権ブレーンが、日商の三村明夫会頭を名指しで厳しく批判した。
