岡村 進
顧客の資産形成の相談業務を担当する皆さんは、金融リテラシー強化の努力を日々重ねていることだろう。ファイナンシャル・プラニングの資格試験に合格し膨大な知識を手に入れても、実践にうまくひも付けられないとの悩みも聞く。PER(株価収益率)等の専門用語を学ぶことは、手段であって目的ではない。

今回は、資産運用の理解に不可欠な確率論のさわりを伝えたい。統計学は、米国では当たり前のように学び、実務に活用しているが、日本ではなぜか広まっていない。

投資信託の営業を、商品概要の理解と販売だけにとどめてしまってはもったいない。投信の中身に一歩踏み込めば、日常業務からの学びが深まり、仕事への自信や誇りが生まれる。すでに耳慣れたはずの指標や言葉の意義を共に点検し、個別企業が投信の特性に与える影響を“考える投資”を促す糸口としたい。

投資信託等の金融商品販売に従事する金融機関職員に尋ねたい。顧客に勧める株式投信に組み込まれている銘柄について、一つひとつ調べてみたことはあるだろうか。こうした質問をするのには理由がある。「納得できる仕事をすること」が、長期的に自身の市場価値を高める源になるからである。
