ここにきて、世界の金融市場は米国の早期利上げへの思惑を背景に乱高下しています。言い換えれば、FRBの要人発言に右往左往しています。ですが、9月13日からは9月20~21日のFOMCに向けた「ブラックアウト期間」に入ります。このため、今後は、FRBの要人発言を材料に金融市場がボラタイルに動くことはなさそうです。
「9月の利上げ」はなさそうだが
利上げが強行されると株、債券、商品のトリプル安も
なお、「ブラックアウト期間」に入る最後の要人発言は、12日のブレイナード理事の講演でした。この講演を受け、12日での9月の利上げ確率は前週末9日時点の24%から15%へ、12月利上げの確率も、同約60%から約55%に低下しました。
こうなると、9月の利上げはなさそうです。仮に利上げが強行されたら「ネガティブサプライズ」で、世界的に株安、債券安、商品安が発生する見通しです。
ただし、発生確率が低いとはいっても、多くの慎重な投資家は「テールリスク(確率は低いけれども、発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスク)」を警戒します。このため、少なくとも9月のFOMCを無事通過するまでは、世界的に株式市場は「様子見ムードの強い」状況が続くことは不可避でしょう。
FRBの要人は早期利上げに消極的なコメント
9月12日(月)のNYダウは大幅反発
なお、これまでの顛末をまとめておくと、前週末9日まで米国では、ウィリアムズサンフランシスコ連銀総裁、ラッカーリッチモンド連銀総裁、ローゼングレンボストン連銀総裁などFRBの要人から、過度な金融緩和が与える経済や資産価格への悪影響を懸念する声が相次ぎました。
その結果、9日のNYダウは大幅に3日続落、前日比394.46ドル安の1万8085.45ドルでした。とりわけ、今年のFOMCの投票権を持つメンバーであり、ハト派として知られている、ボストン地区連銀のローゼングレン総裁が講演で、FRBが政策を据え置く期間が長期化し過ぎれば米経済が過熱する可能性もあるとしたことが市場に驚きと失望を与えました。
しかしながら、週明け12日は事態が一変しました。12日にブレイナードFRB理事が講演で「金融緩和の解除は慎重に進めるべきだ」「予防的な利上げを迫られる状況ではない」、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が物価上昇率が政策目標を下回る水準にあるとして「現状の金融政策が適切だ」と述べ、共に早期利上げに消極的なコメントをしました。
また、アトランタ連銀のロックハート総裁は講演で、具体的な利上げ時期については「市場の混乱につながるのを避けたい」として明言を避けました。これを好感する格好で、12日のNYダウは4日ぶりに大幅反発、前週末比239.62ドル高の1万8325.07ドルとなりました。
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日経平均株価の方向感はFOMC通過後に出る
北朝鮮問題は緊張感の高まりがなければ影響は皆無
米国の先行き金融政策が不透明な状況のため、日経平均株価に方向感が出るとは思えません。出るとしたら、FOMC通過後と考えます。よって、今週の日経平均株価は26週移動平均線(12日現在1万6434.40円)~26週移動平均ベースのボリンジャーバンドプラス1σ(同1万6926.40円)のレンジ内で推移するとみています。
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上振れするなら52週移動平均線(同1万7219.47円)が上値限界、一方、下振れするなら、26週移動平均ベースのボリンジャーバンドマイナス1σ(同1万5942.40円)が押し目限界とみています。ただし、上振れするなら想定外の「ドル高・円安」、逆に、下振れするなら想定外の「ドル安・円高」の実現が必要でしょう。
ところで、北朝鮮の核実験と相次ぐ弾道ミサイル発射を受け、日本の地政学的なリスクが意識されています。さらに、韓国国防省は12日、追加核実験の準備が整っているとの分析結果を明らかにしています。これはこれで脅威ですが、「堪忍袋の緒が切れた米国が、北朝鮮の核施設へのピンポイント攻撃に今日か明日にも踏み切るのではないか?」というくらいまで、軍事的な緊張感が高まらない限り、東京株式市場への影響は皆無でしょう。
いまの日本株にもっとも旬な話題は
「米利上げの時期」と「米大統領選の結果」の2つ
それよりも、米国では、民主党の大統領候補、ヒラリー・クリントン前米国務長官が、11日に米同時テロ15年の追悼式典に参列した際に、体調不良を訴えて途中退席しました。クリントン陣営は、主治医が9日に肺炎と診断していたと発表しましたが、クリントン氏の健康問題を自らの支持率上昇に結びつけたい、共和党の大統領候補のトランプ氏が健康問題の争点化を狙っているそうです。まあ、米国の大統領は米軍最高司令官で核兵器の起爆ボタンを押せる立場です。心身ともに健康な人になってもらわないとなりません。
それはともかく、投資家サイドからすれば、クリントン大統領なら基本的にはオバマ政権の政策を踏襲することが見込めるため、先行きが予想し易いです。つまり、不透明感はありません。しかしながら、トランプ大統領誕生だと、まったく先行きが読めません。つまり、不透明感が非常に強いのです。市場は不透明感を嫌います。
よって、今後、米国の世論調査でトランプ氏の劣勢挽回が鮮明になるようだと、米国株式市場発の波乱が発生するリスクは高まるでしょう。まあ当たり前の話ですが、選ぶのは米国民です。仮に今後、トランプ氏の支持率が上昇しクリントン氏の支持率を上回り逆転するようなら、11月8日の投票日まで、世界の株式市場はジリジリと下落するリスクは頭の片隅にいれておいた方がよいでしょう。
そうこう考えると、当面の日本株は米国の金融政策と政治動向(大統領選挙の結果)に右往左往することになりそうです。
まあ、米国は世界のリーダーであり、軍事、経済の大国ですから、その影響が甚大であることは今に始まったことではありません。そうはいっても、去年の今頃は、6月から始まった「チャイナショック」の影響で、投資家は上海総合指数の動向に右往左往していました。相場を動かす材料にも、流行り廃りがあります。正直、今、上海総合指数を話題にする投資家はあまりいません。
つまり、いま最も旬な相場の材料は、米国の利上げの実施時期と大統領選の結果なのです。
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