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株価100円割れの大ピンチマツダはこの先、生き残れるか!? 巨額増資を繰り返したツケは重い

【第6回】 2012年5月21日公開(2022年3月29日更新)
ワタナベくん
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マツダ(7261)の株価が5月15日、取引時間中に100円になりました。1949年5月に東京証券取引所に上場してから63年間で、最も安い株価です。乗りもの株を愛する者として、非常に残念でなりません。マツダ(7261)の株価はどうしてこんなことになってしまったのか、これからどうなってしまうのでしょうか!?

上場以来の安値を更新、
株価2ケタが目前に迫る!

 まずは、マツダ(7261)の株価チャートを見てください。ザイ・オンラインでお見せできる、いちばん長期間の、月足10年間のチャートです。(クリックすると最新の株価チャートが表示されます)

マツダ(7261) 月足チャート 株価は2009年から低迷している

マツダ(7261)はこれまでにも、たびたび経営の危機を迎えています。最大のピンチは1995年ごろでした。自動車と販売チャンネルを拡大しすぎたのが大失敗して、倒産しそうになりました。この時、マツダ(7261)を助けたのが米国のフォードです。株式の33.4%を保有して、経営再建に力を貸してくれました。

マツダ(7261)はフォードグループの一員として「スポーティーで、走りの楽しい中小型車を作る」という役割を担い、復活しました。大きなグループの一員となって「あなたたちは、こういうクルマを作りなさい」というのがはっきりすると、キャラが立ってクルマが魅力的になるのは最近の富士重工業(7270)の例にも似ています。

 ところが、2007年、世界金融危機が起きて、フォードは保有していたマツダ株を売却せざるを得なくなります。保有株式は3.53%まで減りました。この時は、もう一社の米ビッグ3であるGMも、傘下に収めていた日本の自動車会社を手離しました。いすゞ自動車(7202)富士重工業(7270)スズキ(7269)です。

次世代技術の研究開発や
コスト削減には提携が不可欠!?

新しい技術を開発していくには、莫大なお金がかかります。一方で、利益を上げるためには極限まで無駄を省いて効率を高めなければいけません。そのため自動車会社は互いに提携してグループを形成し、共同で技術開発したり、部品を共通化してコストを削減しているのです。

 今、世界の自動車はメーカーは、おおよそこんな感じの提携・協力関係になっています。

GMが放出した富士重工トヨタ・グループに入り、BRZ/ハチロクを共同開発するなどしてイキイキしています。いすゞも得意のディーゼル技術にますます磨きを掛けて、GMから「もう一度やり直さないか」と言われているくらいです。スズキは、フォルクスワーゲンとの資本提携を解消しようとしていますが、インド市場をガッチリ押さえているので大丈夫。低コストで小型車を作るノウハウに関しては世界中から一目置かれており、モテモテです。

ホンダ(7267)はもともと独立独歩を信条としており、それを貫くだけの力もあります。三菱自動車はあまりパッとしませんが、三菱重工(7211)を始めとした三菱グループの後ろ盾が強力です。こうして見るとマツダ(7261)だけが、どことも組めず、ぽつんと取り残されている印象です。フォードとは今も「戦略的提携関係」にありますが、両社の結束が薄れていることは否めません。

マツダ(7261)にも見るべき技術はあります。例えば最新の「スカイアクティブ・エンジン」は、従来のエンジン性能を極限まで高めることで、ハイブリッドに迫る燃費性能を実現しています。ですが、ハイブリッドや燃料電池といったインパクトがないためか、実力ほどには話題になっていないように思います。

 ユーザーにとってはいい技術なのですが、他の主力メーカーが資本を投じてまで獲得したいというような、画期的かつ独創的な新技術でもないためか、なかなか提携のお声が掛かりません。そうこうしている間も、生き残るためには技術開発の手を止めるわけにはいかず、新市場も開拓していかねばなりません。

68.5%も希薄化する巨額増資
投資家は企業の財布じゃない!

 それで、今年3月、マツダ(7261)はトンデモ巨額増資を実施してしまいました。発行済み株式数17億8037万7399株に対して12億1900万株もの新株発行。1628億円を得ましたが既存株は68.5%も希薄化しました。(増資と「希薄化」がどういうものかは当連載第4回の記事を参照してください)。

しかも、同社は2009年にも「環境・安全分野の研究開発費に充当する」などとして、3億6300万株を増資しています。この時は26%の希薄化でした。増資による希薄化は、既存投資家に犠牲を強いるものです。「これで業績が上がるなら…」と涙を飲んで受け入れたのに、またもや「お金が足りなくなりましたんで、よろしく」と無心したのと同じです。

 クルマはかっこいい、技術は素晴らしい。応援したい気持ちもある。でも、投資家をお財布扱いするかのようなトンデモ増資をやらかして、株価がこんなになっている。愛憎入り混じるこの複雑な気持ち、わかっていただけますか!

 株式投資は銘柄に惚れたら負けと言われます。僕は、自他共に認める〝惚れ体質”で、好きな企業・応援したい企業がたくさんあります。でも、だからと言ってその企業の株を買うわけではありません。

好きな企業・応援したい企業と
儲かる株は同じじゃない!

 よく「好きな企業・応援したい企業の株を買いなさい」という先生がいますが、それは投資のアドバイスとしては致命的な間違いだと思います。自分が好きな企業の株を買うだけで儲かるなら、誰も損はしないはずです。株で利益を上げるには「株価が上がる企業の株を買う」「株価の下がる企業の株を空売りする」かどちらかしかありません。

 でも、好きな会社には期待をかけてしまいます。利益が増えている時にはいいのですが、含み損になって「この会社はこんなところでは終わるはずがない。絶対に盛り返してくれるはずだ」などと信じたら最悪です。

 ズルズルと下がる株価を涙目で追いながら、塩漬け株を抱えることになります。それでも「いつかは復活してくれる」と思い、耐えていたら希薄化上等のトンデモ増資。マツダには、そんな悲しい株主がいっぱいいそうです。

 そうならないために、僕はチャートで売買することを鉄の掟としているのです。自分がどんなに好きな企業でも、チャートが崩れたら手離します。どんなに明るい未来を信じても、チャートが悪いうちは買いません。株を持っていなくても、僕がその企業を好きなことには変わりませんし、応援することはできるのです。

 さて、そのような視点でマツダ(7261)の株を見てみましょう。現在は、ボリンジャーバンドの2σに沿って、ズルズルと下落が続いています。過去の最安値も割り込んで、底なし沼の状態です。投資家それぞれに判断基準があると思いますが、僕なりのやり方では手が出ません。

マツダ(7261) 日足チャート  ボリンジャーバンドの-2σに沿って下落中


 上場来安値を割り込んでいるわけですから、この株を買っている人は現在、ほとんどが損をしています。損をしている人は「何とか自分の買値まで戻ってくれ! せめて”プラマイゼロ”になってくれ」と強く願っています。そうして株価が反発して自分の買値に達すると、含み損の辛さから解放されるために売ってくるのです。

こうなったらマツダを買いたい!
ワタナベが考える5つの条件

 そうした売りをこなしながら、株価が上げていくのには、大変なパワーがいります。ですから「もういいかげん安いだろ」という何となくの値ごろ感だけで買うのは、個人的にはよろしくないと思います。僕が再びマツダ(7261)を買うなら、こんな条件が整ったときです。

(1)懸念を払拭するような材料が出る。具体的にはよい資本提携先が見つかる。

(2)現在ズルズル損を膨らませている大量の株主が、悲鳴を上げてぶん投げるような急落がある。

(3)何度か同じ安値をつけて「これ以上は下げないんだろうな」と思われる底値が見つかる。

(4)株価が上下する値幅が小さくなり、それに伴ってボリンジャーバンドがキュ~ッと狭まり(=セクシーになり)煮詰まった末に+2σをボンッと飛び出す。

(5)誰も予想しないくらい大ヒットする新型車が出る。

のいずれか、または複数です。長期的なトレンド転換のためには(1)のシナリオがいちばん望ましいのですが、世界を震撼させる「××ショック」があれば(2)もあり得ます。(3)はそれだけでは根拠に乏しいので、材料との合わせ技に期待したいシナリオ。(4)は僕の必殺技「セクシーボリンジャー投資法」ですが、この状態からだと少し時間がかかりそうです。

⑤は誰にも予想できないのですが、往年のファンは期待しているのではないでしょうか。というのも、マツダ(7261)はこれまでも「もうダメだ…」というピンチに陥るたびに、とんでもなく売れまくる大ヒット車種が出てきたからです。1980年の「赤いファミリア(5代目)」や、1996年の「初代デミオ」がそうでした。

 先月27日、マツダ(7261)は2013年3月期の連結営業損益が前期の赤字から、300億円の黒字になると発表しました。最新のスカイアクティブ技術をフル搭載した新型SUV「CX-5」が「日本、ロシア、ドイツなど主要6カ国で計画の2倍以上」(山内社長)を受注して、好調を牽引したのだそうです。果たしてこのクルマが、株価2ケタ危機を救う救世主となるでしょうか。がんばれ、マツダ(7261)! 噴き上げろ、スカイアクティブ!

スカイアクティブを搭載したCX-5 (撮影:ザイ・オンライン編集部)
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