グーグル、ヤフーに次ぐ世界3位のインターネット検索サービスBaiduは、創業10周年を迎えた。10人足らずで起業した会社は急成長を遂げ、いまや押しも押されもしない中国首位のインターネット企業となった。創業者の李彦宏(ロビン・リー)会長兼CEOが、Baiduのこれまでの10年とこれからの10年について語る。
自信と起業の夢を育んだ
シリコンバレーの息吹
「6ヵ月で検索エンジンの初版を開発します」──。
Photo by Shuhei Kaihara
時計の針を巻き戻した10年前の2000年初頭、31歳の若き経営者が、海千山千のベンチャーキャピタルの投資家たちを相手に今後の事業計画を熱く語っていた。中国インターネット検索サービス最大手Baiduの李彦宏(ロビン・リー)会長兼CEOである。
「もっと資金を出すから開発を早めることはできないか」。創業したばかりで喉から手が出るほど資金が必要だったロビンにとって、非常に魅力的な提案だった。普通の経営者であれば、「わかりました。やってみましょう」と請け合ったことだろう。しかし、しばし考えたすえに彼が口にした返答は、「できません」だった。
このひと言で、Baiduとロビンはベンチャーキャピタルの信頼と資金を勝ち取った。あとになって投資家たちから、「あなたの回答には非常に満足した」と聞かされた。ロビンが非常に正直であり、できるかどうかわからないことを軽々しく約束する人間ではないとわかったからだった。
「少許諾,多兌現」(わずかの承諾で、多くを実行すること)──。ロビンの経営信条だ。実際、検索エンジンの初版はわずか4ヵ月で開発を完了し、投資家たちを驚かせた。
業績だけを見れば、Baiduのこれまでの10年は順風満帆そのものだ。この9年で売上高は684倍の44億元(約572億円)まで急拡大し、中国におけるシェアは70%超と断トツだ。
だがここまでの道のりは決して平坦ではなかった。創業当初は、「もうダメかもしれない」と何度も挫けそうになった。そんなときロビンを支えたのは、「自分が好きなことにチャレンジするなら、たとえ失敗しても後悔しない」というチャレンジ精神だった。その原点となったのは、8年間の米国生活だ。