「OJTが機能しなくなった」と言われるようになってかなりたちますが、ビジネス人材の成長にとってOJTがきわめて重要であるということは言うまでもありません。Off-JT、すなわち研修室での研修だけではビジネスマンとして成長できないであろう、ということは多言を要さないでしょう。

 振り返れば、私自身もそうでした。記者という仕事では、100%OJTによって若手は熟達します。記者研修などというものは聞いたことがありませんし、少なくとも私は一度も受けたことがありません。

 右も左もわからないままに週刊ダイヤモンド編集部に配属され、3年次上の先輩記者に、それはそれは懇切丁寧かつ厳しい指導を受けたことについては、連載の初回に述べました。

 しかし、編集部内でも、誰もがそれほどまでに懇切丁寧な指導を受けたわけではありません。記者というのは(他の仕事でも多くはそうでしょうが)何より自分自身の追うテーマが大事です。できれば、未熟な若手の指導などはしたくない。ただ、たまたま私の指導を担当してくれた先輩記者は、とても真剣に育成に取り組んでくれたのです。

 ちなみに、彼は編集部でも折り紙つきの優秀な記者でした。若手の指導なんて面倒くさい、とばかりに放置するような先輩ほど、記者としても力量が劣った、という事実は示唆的な気がします。

 それはともかくとして、私は稀にみるほど密度の濃いOJT指導を受け、先輩記者にさんざん手を焼かせながらも、まあ、成長していったわけです。

 OJTはともすると「現場にお任せのジョブ・トレーニング」になりがちです。優れたOJT指導者に巡り合った私は、非常に幸せだったのでしょう。