あるベテラン・ファンドマネジャーは、「今の日本経済の命運を握っているのは、米国のFOMC(連邦公開市場委員会)だ」と嘆いた。
彼の言わんとするところは、米国のFOMCの金融政策が、わが国経済の先行きを大きく左右する為替市場の動向(円高)の動きを決めていることを指摘しているのだ。
為替レートは、基本的に当該通貨間の相対的な量によって決まる。あり余るほど多額のドル紙幣が氾濫すると、それだけドルが売られやすくなる。ドルが売られると、必然的に円は強含みの展開になり、結果として円高が進展することになる。
その米国の通貨供給量を決めているのが、他ならぬFOMCの金融政策なのである。
史上最高値圏を推移する円高
ドルの氾濫が招く新たなリスク
国内の人口が減少局面に入り、少子高齢化が加速するわが国にとって、国内需要が短期間に大きく盛り上がることは期待できない。いきおい、景気回復は海外向け輸出の拡大に頼らざるを得ない。輸出がわが国経済の生命線といっても、過言ではない。
問題は、足許において史上最高値圏で推移している円高だ。ここからさらに円高が進むと、わが国製品の競争力が低下して、頼みの輸出が伸び悩む可能性が高まる。それは、わが国経済にとって大きな痛手になることは間違いない。
また中長期的に見ると、円高の進展は国内企業の海外移転を促進することになる。その場合には、大手企業に続いて中堅、中小企業までもが海外に出て行かざるを得なくなる。
それが現実になると、国内は、まさに“もぬけの殻”状態になってしまうかもしれない。現在、日本経済はそれほど厳しい状況に追い込まれている。