1粒100円の梅干しに大行列!「とまと梅」の正体★南高梅
紀州梅を代表する南高梅で作られた梅干し。みなべ町内にある梅専門研究機関「和歌山県うめ研究所」では南高梅とみなべ町原産の「地蔵梅」を掛け合わせてβ-カロテンが、南高梅の6倍も含まれた新品種「橙高」も開発している

 和歌山県は梅生産量日本一。全国の6割を占める6万3800トンを送り出す一大梅王国として52年連続トップを走り続けている。

 紀州梅の代表的な加工品は、なんといっても梅干しだ。紀州梅を代表する品種は「南高梅」。大粒で皮がやわらかく肉厚、ジューシーな南高梅を使った梅干しは最高級品とされ、まさにトップブランドたる地位を確立している梅だ。もっとも生産が盛んなのは、みなべ町、田辺市を中心とする紀中・紀南地方だ。

 南高梅発祥の地であるみなべ町。昨年12月には、伝統的な梅農業の仕組みが「みなべ・田辺の梅システム」として世界農業遺産とに認定された同町の梅生産量は、3万4800トン。全国の3割を占め、町内における農家の99.9%が梅栽培に従事する。

1粒100円の梅干しに大行列!「とまと梅」の正体みなべ町・南部梅林。養分に乏しく礫質で崩れやすい斜面を活用して薪炭林を配置し、400年にわたり高品質な梅を持続的に生産してきたという農業的な仕組みが世界的に優れていると評価され「みなべ・田辺の梅システム」として認定された

 江戸時代に栽培がはじまった紀州梅が、全国にその名を広めたのは、昭和50年代のこと。健康食品ブームを背景に梅干しの人気に火が付き、消費が拡大。さらにそのころ、革命的な商品が現れた。「調味梅干し」である。

「『かつお梅』『はちみつ梅』などの食べやすい調味梅干が大ヒット。消費量が増大し、梅産業の発展に勢いがついたんです」

 こう語るのは日本で唯一、みなべ町役場にしかない「うめ課」の平喜之さん。ふっくらした果肉に旨みと味わいが加わった南高梅の調味梅干しは多くのファンをつかみ新たな消費を開拓。ブランドを確立していった。

10年で3割も消費量が減少!
「おにぎりの具は梅干し」条例制定

1粒100円の梅干しに大行列!「とまと梅」の正体和歌山県と県内外の食品関連企業が研究会を立ち上げ、開発した「紀州梅バーガー」が新たな梅グルメとしてブレイク中。「とっとりバーガーフェスタ2015」に出店し、見事2年連続グランプリを獲得。写真は「パン工房カワ」の「まるごと!紀州梅バーガー」。

 しかし、ここ数年、梅干しの消費は減少する一方だ。食生活の多様化を背景に、年間購入額量は平成14年の1053gから25年には759gと3割も激減。梅干し離れが加速していた。

 これはみなべ町にとって大問題である。みなべ町は梅の生産だけではなく、加工、流通、販売の拠点が集積。いわば、「梅で経済が回っている」みなべ町にとってはまさに死活問題である。

 梅干しの存在を忘れられては困る!

 みなべ町は消費拡大のために猛烈なPRを開始。全国規模のイベントなどに積極的に出展、町長自ら出演するラジオCMを全国ネットで流すのみならず、ついに「掟」まで作ってしまった。

 「おにぎりの具はすべて梅干しにするように!」

 「梅干しおにぎり条例」の制定である。