減塩ブームを受けて、梅干しの塩分はどんどん低くなっている。白干しとよばれる、昔ながらの塩漬けの梅干しの塩分は20パーセント以上。いまは、5パーセントも当たり前の時代。はちみつ梅などとにかく「甘い」ものが好まれる。そして、ごはんの友としてだけではなく、「おやつ」や「デザート」感覚で気軽に食べられる梅干しができないものか……。

 そんな折、平成15年、旧JAみなべと、旧JAいなみの合併により、JAみなべいなみが誕生した。新しい組織となったことをきっかけに両JAのブランドを組み合わせた新しい商品を作れないかという話が持ち上がった。

 JAみなべが誇るのはもちろんのこと南高梅。JAいなみが誇るブランドは高糖度のミニトマト「優糖星」だ。芦硲さんは、ふと閃いた。

「すいかに塩をかけたら甘くておいしくなる。あれと同じで、トマトと梅干しをコラボさせたら、甘みが増してうまいこといくんちゃうか」

 イケると思った芦硲さんに対して周囲は、いたって冷ややかだった。

「そんな組み合わせあかんやろ」「そんな梅干し作って売れるわけないやろ」と言われたものの、優糖星の生産者に許可を取りに行った芦硲さん。話を聞いた生産者は仰天した。

「何を考えとるんや!」

 それもそのはず。優糖星は、市場の評価が高く、入手が困難なほど希少価値の高い「高級ミニトマト」。そんなぜいたく品を「梅干しに使うなんて、ありえない」話だったのだ。

 しかし、優糖星は厳選出荷のため未利用果実も多い。「生産者の所得向上になる」と説得し、優糖星の出荷時期である、11月~6月を過ぎた果実を仕入れることに成功。

1粒100円の梅干しに大行列!「とまと梅」の正体JA紀州の「とまと梅」。塩分控えめ、フルーティで、あとひく美味しさ!

 優糖星のトマト果汁に南高梅を漬け込んで1ヵ月、梅の酸味とトマトの甘みのバランスに「ものすごく苦労」しながら、改良に2年を費やした。若い人、そして梅干しが苦手な人を対象に行った試食で「どちらの反応もいいものを」とさらに改良を重ね、ついに平成21年「tomato-ume(とまと梅)」が完成した。

 とまと梅は、糖度の高いトマト果汁の自然な甘みの効果で、梅干しの酸味が緩和され、まろやかで甘くフルーティな味わい。まさに「デザート感覚」の梅干しである。使われている梅はすべてA級品だ。

 若い人にも気軽に手に取ってもらうために、パッケージデザインも工夫した。芦硲さんいわく、「東京のデザイナーに農協らしくないデザインで(笑)」と発注したパッケージは赤が印象的なまるでスイーツのようなボックスだ。

 完成した史上初の『デザート梅干し』を売り込むべく、東京ドームで開催される「ふるさと祭り東京」に乗り込み、和歌山県ブースで試食販売してみたところ、お客がひっきりなしに訪れた。