──主題歌が4曲も入っていたことには、そういう理由があったのですね。

(C)2016「君の名は。」製作委員会

 ええ。「面白くても散らかっていない」と言いますか、面白いのが大前提で「詰め込み気味だけど、形は整えられていてその中に収まっている」というイメージです。そのため、映画の見方がある程度定まっている人や、好みが定まっている年配の方にとっては「少し違う」と苦言を呈されてもおかしくはありません。

今の映画に生きている
ゲームのパッケージを作る仕事

──「違い」という点で言えば、もともと、新海監督は、宮崎駿監督や庵野秀明監督のようなアニメーター出身ではありません。大学卒業後にゲーム会社に就職してキャリアを始めましたが、当時の経験は生きているのでしょうか。

 ええ、それはもちろんです。日本ファルコムというゲーム会社に5年ほどおり、当時社長であった加藤さん(正幸会長)直轄のチームで働いていました。パソコンゲーム黎明期、8ビットゲームの伝説的な人ですが、そんな方に泣く寸前まで叱られたりしていました(笑)。

 そこで強烈に学んだのは、「君たちは物を作りたくて入ってきたかもしれないが、ゲームは1本8000円なり1万円なりする商品であり、それを顧客に買っていただいているのだ」という教えです。

 私はゲームのパッケージを作る仕事をしていました。「何がこのゲームで斬新なのか」を考えて、キャッチコピーを書いたり、パッケージに使用するための画像を選んだりしていました。それには、ゲームを分かっていなければならないため、何度も何度もゲームをプレイしました。と、同時にパッケージのビジュアルも担当し、店頭用のオープニングデモ映像も作っていました。

 デモ映像は1、2分という短い中で、ネタバレはせずに、その作品の魅力を詰め込まなければなりません。しかも、フレッシュに見せなければならないし、面白く見せるために、ある種のウソをつかなければならない。映画の予告編のようなものですね。

 これは貴重な体験でした。自己満足なゲームであってもいけないし、単に面白いゲームを作ればいいわけではない。何が面白いのかを言語化し、商品をパッケージとして見せ、映像で伝え、ゲームの魅力を伝える。そうしなければ買ってもらえない。こうしたことを徹底的にたたき込まれました。

 本当はゲーム開発の部署に行きたかったのですが、開発には回してもらえず、その仕事をずっとやっていました。