もし、「コトバ」という競技があったとしたら、誰が金メダルを獲得するのでしょう?競技自体についてはたくさんの場で語られているので、この場では、選手のコトバについてのみ注目してみたいと思います。史上初3年連続ビジネス書ベスト10入り『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一が、名言の金・銀・銅を、独断と偏見でかってに採点してみました。あまり知られていない、でも震えるほど素敵な名言も。

名言の銅メダルは、山縣亮太選手、江原騎士選手、福原愛選手の3人

卓球女子団体で銅メダルを獲得し、笑顔の福原愛、石川佳純、伊藤美誠=16日、ブラジル・リオデジャネイロ : 時事

 オリンピック/パラリンピックの目的は何でしょうか?人間の極限に挑戦すること。世界を平和でつなぐことかもしれません。でも、大きな目的のひとつに、「見ている人たちに元気やパワーを与える」ことがあるのではないでしょうか。

 今回も、魂をかけて戦う選手を見て「私もがんばろう」とポジティブなエネルギーを多くの人がもらったと思います。それには、圧倒的な競技を見せることが重要です。さらに感動を加速させたのが選手たちのコトバです。日本人メダリストのコトバを見て、そのコトバの強い順にランキングをしました。

 銅メダルは、3人います。

 まず、山縣亮太選手(陸上リレー 4×100m)

「夢は実現できるんだということを、証明できてよかった」

 ひとり一人の100mのタイムでは、他国に完全に負けていた日本。メダルを取ることは、夢のまた夢だったのでしょう。でもバトンパスでの徹底した連係プレーで日本史上初の銀メダルでした。このレースを見ていて、多くの人が勇気をもらったに違いありません。この日ばかりは、日本人の会社や学校に向かう足取りは、いつもよりも平均速度がちょっと上がったのではないでしょうか。

 「夢」というファンタジーなことと「実現」というリアルなこと。その正反対の組み合わせがとても印象深いコトバとなりました。(ギャップ法)


2人目は
江原騎士選手(水泳リレー)

「いつから涙が出ていたかは、覚えていないんです」

 騎士と書いて、「ナイト」と読む江原選手。その名前にふさわしく、ドラマチックな名言でした。4人いるリレー選手の中で、第2泳者だった江原選手。全力で泳ぎきり、あとの選手を見ながら、涙を流していたことに対してのコトバ。

 赤裸裸なコトバはとても心に刺さります。一見はずかしいくらいの、自分のカラダに起こっていることをあえて口にすることでとても強いコトバとなるのです。北島康介選手の「超きもちいい!」と同じです。(赤裸裸法)


そして3人目は
福原愛選手(卓球)。

「銅メダルも金に相当する。だって、銅の字を分解すると、『金と同じ』じゃない?」

 福原選手は、とてもまじめな女性なのだと思います。オリンピックとずっと向き合い続けて、オリンピック期間以外でも、ずっと来る大会と対峙し続けていたのじゃないかと思います。これは迷言のようにも感じられますが、福原選手にとっては金と同じだけの喜びがあったことが伝わって来ます。

 漢字の中にある文字を分解したなんて、とてもクリエイティブです。そして、福原選手は、とてもコトバを大切にしていることがわかる名言でした。これからも彼女は名言をつくっていくでしょう。