名言の金メダルは、吉田沙保里選手(レスリング)
「ごめんなさい。取り返しのつかないことをしてしまって」
金メダルとは、地球上で1位の人であったということ。それだけ磨かれた人間の最高峰を見るから心が震えます。でも心を震わせるのは、それだけではありません。地球一を目指してきた選手の背負っているもの、真剣なまなざしからこぼれたコトバにも、人は震えました。
今回のオリンピックで一番震えたのは、吉田沙保里選手の勝利を逃したときのコトバだったのではないでしょうか。判定が出た瞬間、日本中から悲鳴がきこえました。
インタビューで「ごめんなさい。取り返しのつかないことをしてしまって」と生中継され、一方で日本中の人たちが「そんなことないよ!」と一斉に思いました。地球の裏側からのくやしさが痛いほどわかって、せつなかったです。
もちろん結果は残念でした。でも、心を震わせたコトバという点では、今回のリオ・オリンピックでの堂々金メダルでした。
オリンピックの名言から、私たちも学べることがある。
これらのコトバは、魂をかけて勝負した選手たちが、神の領域に近づくレベルで戦ったがゆえにおりてきたコトバだったと思います。私たちの魂も揺さぶられました。天才である彼らだからこそ、そんなコトバが言える……と私たちは思いがちです。
でも、違います。私たちだってそんな人の心を震わせるコトバをつくることができるのです。つまり、伝え方には技術があります。例えば
「夢は、実現できる」
これは「夢」に対して、反対の意味である「実現」というコトバが入っているから、心をゆさぶるコトバになっているのです。
「1キロがあっという間に感じた」
も、「1キロ」に対して、反対の「あっという間」というコトバが入っています。
これらは、オリンピックの歴史的な田村亮子選手の名言である
「最高で金、最低でも金」
と同じ伝え方の技術、「ギャップ法」です。
正反対のコトバが入っていると、聞いた人の心が揺さぶられるのです。これは、天才でなくても再現することができます。たとえば
「あなたが好き」
というコトバを強くしたいなら、「好き」と反対のコトバを手前に入れればいいのです。「嫌い」ですよね。
「嫌いになりたいのに、あなたが好き」
と言われたら、どきっとしませんか?より強く伝わります。そう、そのように伝え方には技術があって知っていれば、誰であっても上手に伝えることができるのです。
私はこれを「伝え方のレシピ」と呼んでいます。料理をつくるように、レシピがあってその手順通りにつくれば、誰でも強いコトバをつくることができてしまいます。
一読のススメ
結婚式や朝礼などのスピーチで。企画書の決めワードに。知っていればさまざまな場で応用がききます。知っているか知らないか、だけなのです。『伝え方が9割』は、そんな伝え方レシピをかんたんに学べます。
今年もあと3ヵ月。仕事をプライベートを加速していきたい人はぜひ、伝え方のレシピを身につけてみてはいかがでしょうか。いちど身につけることで、一生あなたの武器になるでしょう。
こんな、伝え方のレシピを身につけたら、スポーツもビジネスも、もっともっと面白くなるのではないでしょうか。そして、それは天才にしかできないものではありません。伝え方はセンスではなく、技術なのです。
佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年大手広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。カンヌ国際クリエイティブアワードでゴールド賞他計6つ獲得、など国内外51のアワードを入賞受賞。福岡県クリエイティブディレクター、シェラトンJAPANクリエイティブディレクター、などブランディング、広告CM制作多数twitter:@keiichisasaki Facebook:www.facebook.com/k1countryfree HP: www.ugokasu.co.jp