この秋の健診で肝機能に黄色信号が出たBさん、46歳。別に大量飲酒をするわけでも、ウイルス性肝炎でもない。半信半疑で紹介先を受診したところ、NASHの疑いと診断された──。
NASHとは非アルコール性脂肪肝炎のこと。脂肪肝の重症例と考えればよい。ひと昔前までは、脂肪肝は良性疾患と片づけられていた。しかし最近はNASHから、肝硬変や肝がんに進展する危険性が明らかになり、肝硬変の3割を占める「原因不明例」の多くにNASHが関係していると考えられている。
肝臓は「沈黙の臓器」として知られ、再生能力が高く、多少の損傷は物ともしないで働き続ける。そのため自覚症状が出たときは、すでに病状が悪化していることが多い。肝機能検査値を手がかりにして普段から自衛が大切だ。
肝機能は主に、ALT(GPT)とAST(GOT)の2項目で判定される。これらは血液中に流れ出た肝細胞内の酵素の濃度を意味し、肝細胞の破壊が強いほど上昇する。NASHの前段階、つまり脂肪肝では、まず、ALTが上昇する。ASTは正常でも、ALTが基準ギリギリから異常値だったら要注意。また、メタボ健診で引っかかった人はほとんどが脂肪肝になっている。