肝機能の推奨値を学会が初設定、「ALT(GPT)30超」は受診をPhoto:PIXTA

 今年6月15日、日本肝臓学会は健康診断の血液検査項目のうち、肝機能を反映するALT(GPT)値「30超」を医療機関への受診指標とすると発表した。学会が明確に推奨値を定めたのは初めて。

 これまでALTの「基準値」は検査機関によって幅があり、ALT30が「正常値」とされていたケースも多い。一般人としては納得がいかないだろう。

 今回、厳しめの数値が設定された背景には、肝炎ウイルスによる肝疾患が減少傾向にあるのに対し、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)やアルコール性肝障害など、非感染性の肝疾患が増加している現実がある。

 同学会の報告(暫定値)によると、2018~21年に診断された肝硬変の原因は、アルコール性が28.8%と1983年の調査開始以来、初めてトップになった。次いでC型肝炎ウイルスが27.1%、NASHが12.7%、B型肝炎ウイルスが10.9%だった。

 ちなみに前回調査(18年)では、アルコール性が24.9%、NASHは9.1%であり、非感染性症例の増加は明らかだ。

 非感染性/非アルコール性の肝疾患では、肝細胞の炎症から線維化(瘢痕化)が生じて肝臓が硬くなり、肝硬変になる割合は10~20%。さらに進行すると一部に肝細胞がんが生じる。できれば線維化が軽度で肝臓ががんばっているうちに、肝臓に炎症を起こしかねない生活を改めたい。そのために、まだ回復の余地があるALT30超を目安としたのだ。

 それでも納得できない人は、医療者も使う「肝臓の線維化の評価指数=FIB-4 Index」でリスクを確認してみよう。線維化の程度を、ALTとAST(GOT)と血小板数、年齢から推計するもので、佐賀大学医学部附属病院肝疾患センターの「やばか指数」で検索すると計算サイトがある。

 FIB-4 Indexの~1.3は線維化リスクが低く、まだリカバリーできる。1.3~2.67は肝臓が硬くなり始めた可能性があるので、かかりつけ医に相談してみよう。そして2.67以上なら、直ちに専門医への紹介を頼むことだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)