「死を見据え、生をみつめる」ハイデガーの思想

 そんな不倫に燃えたハイデガーだったが、彼の思想の中でも「いつか死んでしまうという人生の有限性を真っ向からみつめ、今を生きる」「死ぬことにおいては誰しも代役を用意できない」という人生論は多くの人の胸を打ち続けている。

 不倫は社会においては「悪」であることに間違いないが、実存主義的に考えると「いつか死んでしまうのに、自分の気持ちに嘘をつくことが本当に正しいのか?」とも捉えることができる。

 一度きりの人生なにか葛藤した時に、自分の気持ちに素直に生きるか。社会の善悪を基準に考えるのか。という問いに関する答えを自分なりに考えてみるために、ハイデガーの人生論を取り入れてみてはいかがだろうか。

原田まりる(はらだ・まりる)
作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター
1985年 京都府生まれ。哲学の道の側で育ち高校生時、哲学書に出会い感銘を受ける。京都女子大学中退。著書に、「私の体を鞭打つ言葉」(サンマーク出版)がある