「危機感」と「不安感」、一見同じように思えますが、メンバーを育成していくうえで、天と地ほどの差があります。リーダーが大事にすべきなのは、どちらでしょうか?新刊『トヨタの伝説のディーラーが教える絶対に目標達成するリーダーの仕事』から、その問いに答えていきます。
危険回避行動を促す
連載第2回「なぜ寄せ集めの集団がトヨタ史上最高となる48ヵ月連続で販売目標を達成できたのか?(下)」で「危機感」の必要性について触れましたが、危機感と状況が似ている言葉に「不安感」があります。
危機感はチームにとって必要ですが、不安感は決して必要ではありません。その違いを理解してください。
危機感は、「このままでは危険だ」という感情です。「危険を回避するために何とかしなくては」と前向きな行動につながります。
不安感は、「怖い」「不安だ」という漠然とした感情です。それが何かの行動につながるものではありません。不安が募ると縮こまってしまうこともあります。
危機感はポジティブな行動につながりますが、不安感は恐怖を感じるだけなのでポジティブな行動にはつながりません。
リーダーが部下に示していいのは、不安感ではなく、あくまでも危機感です。
しかし特に営業の現場では、不安感を与えてしまうリーダーをよく見かけます。
「このままじゃ来週の目標、未達になりそうだぞ。未達だったらどうなるか、わかっているんだろうな!」
これでは部下に不安を与えるばかりか、パワハラで訴えられる可能性もあります。そして脅しや不安感で指示命令を押しつけたとしても、継続的な成果は望めません。
同じ内容であっても、こんな言い方にすればいいのです。
「このままでは来週の目標を達成するのは難しいと思うよ。でも、なんとしても達成したいよね。じゃあどうすればいいと思う?」
リーダーが思っているほど危機感を抱いていないスタッフは多いものです。そこでこのように投げかけて、危機感をきちんと認識してもらいましょう。加えて、問題を解決する方法を一緒に考えるように促せば、スタッフの前向きな行動を引き出すことができます。