トヨタ史上最高のオープン初月から48ヵ月連続での販売目標達成は、社内どころか社外にも驚きをもって伝えられた。さまざまなメディアで紹介されたが、一番の問いは、「なぜ、寄せ集めの集団が最強の組織に変わったのか?」である。新刊『トヨタの伝説のディーラーが教える絶対に目標達成するリーダーの仕事』から、その問いに答えていくとする。

人を育てる条件

 リーダーになったら絶対にやらなければいけないことは、人を育てることです。

 組織の上に立っていながら人材育成をしないのなら、それは単なる管理者。誰でもできる仕事です。部下を成長させてこそ、リーダーとしての職責を果たしたといえるし、仕事の喜びもあります。

 そして人材育成に力を入れているリーダーは、自分が困難に直面したときに、育てた部下に助けられます。私も苦しくなったときに部下が協力してくれたからこそ、目標連続達成が実現できました。

 反対に、育成に力を入れていないリーダーは、困ったときに協力してくれる部下が誰も現れず、行き詰まってしまいます。

 さて人を育てるには、褒めたり励ましたりすることも必要ですが、時には厳しい姿勢を見せることも大切です。

 たとえばミスをしてしまったり、目標を達成できなかったりと、うまくいかなかったとき、こんな言い訳をしてくる部下もいるのではないでしょうか。

「競合相手が値下げしたから」「お客様の気が変わったから」「市況が急激に悪化して需要が少なくなったから」「きちんと説明したが相手が聞き間違えた」などなど。

 なかにはもっと論理的に自分の正当性を説明してくる人もいますが、よくよく聞いてみれば、これらは全部自己中心的な言い訳にすぎなかったりします。
他人のせいにして言い訳をしている限り、問題はいつまでたっても解決しませんし、本人も成長できません。だから言い訳をするような部下をリーダーは許してはいけません。

 そんな言い訳を認めてしまったら、「このリーダーは与しやすい」と思われます。リーダーが舐められたら求心力はなくなり、チームをまとめることもできなくなってしまいます。

問いかけてから諭す

 たとえばあるコーヒーショップで、若いスタッフがお客様からクレームを受けたとします。スタッフはリーダーにこんな言い訳をしていました。

「お客様は『コーヒーが熱すぎるからやけどをした』と言っています。でもコーヒーが熱いのは当たり前じゃないですか。注意しないで飲むほうが悪いんですよ」

 確かにスタッフの言うことにも一理あるかもしれませんが、そんな言い訳を認めるわけにはいきません。私なら彼にこう言うでしょう。

 リーダー 「君は、コーヒーが熱いのは知っていたよね?」

 部下 「ええ、知っていました」

 リーダー 「じゃあなんで、『熱いのでお気をつけて』とひと言言わなかったんだ?それは君の不注意じゃないのかい?」

 部下 「それは……」

 リーダー 「そのお客様にしてみれば、コーヒーの温度が高いことに対してではなく、君の気遣いがなかったことに対して怒っているんだよ。君がひと言添えていれば、たとえやけどをしたとしても、お客様は怒らなかったと思うよ」

 こんなふうに問いかけてから諭せば、本人も問題に気づいてくれるはずです。と同時に、「このリーダーには言い訳は通用しない」と理解するでしょう。

 言い訳という行為は、本人の心理状態を表しているともいえます。

 多くの場合、何かに追い詰められていて、苦し紛れに自分を正当化しようとして、言い訳を発してしまうのです。

 スタッフが追い詰められているような状態をつくってしまっては、目標達成などとてもできません。

 スタッフが言い訳を言い出したら、何らかの問題を抱えているサインと捉えて、問い詰めたり叱責したりするのではなく、「問いかけてから諭す」ことで、問題を解決してあげてください。