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メガバンクの支店営業で要となるべき30代の行員が、悲鳴を上げている。
「うちは本部の人数が全営業店(支店)の法人担当者数より多い逆転現象が起きている」。そう明かすのは、三菱東京UFJ銀行(BTMU)の首都圏支店に勤務する30代の就職氷河期世代の男性行員だ。
BTMUは、全国に200を超す法人支店(リテール店舗を除く)を擁し、地元の中堅・中小企業に対して融資や新規開拓に当たっている。
銀行業界では「支店」のことを「営業店」と呼ぶ。その名のとおり、営業の最前線にあるからだ。大手企業だけを相手にする本店の営業本部と違い、支店の法人部隊はドブ板営業が基本で地味だが、銀行の大きな収益源でもある。
「本来なら営業店にこそ人数を割くべきなのに、本部は現場に人を出してくれない」。男性行員は不信感を募らせている。
本支店の逆転現象の背景には、2006年の東京三菱銀とUFJ銀の合併があるという。本部勤務の中堅行員は「合併に伴うシステム統合を本部主導で行ったほか、店舗の統合に伴うサポート要員が必要なため、本部人員がふくらんだ」と説明する。
邦銀同士が合併する際には行内宥和が優先されるため、常に営業活動の停滞が付いて回る。BTMUは08年にシステムの完全統合を成し遂げたが、それからいかに早い段階で合併の相乗効果を出せるかが課題とされた。
ただ、「グループの証券会社や海外には積極的に人を出しているが、国内の営業店には回ってこないため、多くの営業店で業務に支障が出つつある」という男性行員の指摘から判断すると、思うようには進んでいないと言わざるをえない。
おまけにメガバンクの支店はBTMUに限らず、歪なひょうたん型の年齢構成で機能不全に陥りつつある。
「支店長代理」クラスの役付行員として、各店舗で営業の中軸を任されている30代の氷河期世代は、採用数が極端に少ない。にもかかわらず、その下の世代では大量採用が復活、氷河期世代は手薄な陣容で実績を求められつつ、教育係までもこなさなければならず、疲弊し切っているのだ。
ただでさえリーマンショック後は、与信判断が難しい案件が増えている。そのうえ、支店の法人部隊は20代ばかりが増えて営業力が極端に低下しており、このままいけば、支店の業績が下降線をたどるのは必至の情勢だ。
本部も研修を充実させたり、中途採用を実施したりして対応しているが、中途採用組は本部勤務が多く、対症療法の域を出ない。
帝国データバンクの調べによると、BTMUがメインバンクの取引先は10万社を超え、国内最多だ。支店の弱体化で最も損害を被るのは、こうした取引先であることを経営陣は忘れてはならない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)