前回は、意外に知られていない健康保険の保障のひとつ「高額療養費」について紹介した。これは、1ヵ月間に支払う医療費の自己負担額には所得に応じた上限があり、限度額を超えると払い戻しを受けられるという制度だ。

 たとえば、一般的な所得の人は、1ヵ月の医療費が100万円かかっても、最終的な自己負担額は9万円程度ですむ。治療が長引いて継続して医療費がかかった場合は、さらに上限額が引き下げられる。これを多数該当といい、医療費が高額になった月が、直近12ヵ月以内に3回以上になると、4回目からは限度額は4万4400円(所得が一般の場合)になる。

 多くの人は、入院や手術をしても、やがて元気になって退院していく。医療費が高額になったとしても一時的なものなので、健康保険にこうした制度があることを知っていれば、闇雲に医療費の心配をすることはない。

  しかし、ほぼ一生涯、治療を続けなければならない病気もある。そのため、高額な治療を長期間必要とする病気の患者には、高額療養費の自己負担限度額を特別に1~2万円に引き下げる「高額長期疾病(特定疾病)」という制度もある。

 原因不明で治療法が確立していない難病で、国の特定疾患治療研究事業対象疾患に指定された病気の患者は、医療費の自己負担分を所得に応じて公費で助成してもらうこともできる。また、18歳未満(引き続き治療が必要な場合は20歳未満)の子どもが、小児がんや小児に多く見られる1型糖尿病などの小児慢性特定疾患になった場合も、医療費の自己負担分が公費助成されるので、対象となる人は都道府県の窓口に相談しよう。

 しかし、これらの助成制度は不完全で、制度の谷間で苦しむ患者も存在する。

 その一例が、血液のがんのひとつである慢性骨髄性白血病(CML)だ。