「えっ、そんな簡単なことで?」「もっと早く知りたかった!」――そんな声が続出。定年前後の“選択”ひとつで、生涯の手取り額が2000万円以上変わることをご存じですか? 「退職金」「年金」「保険」「働き方」…一つひとつは小さなことでも、知らずに選ぶと大きな損になります。マネージャーナリスト・税理士の板倉京氏が、2024年の制度改正に合わせて大幅改訂した話題の一冊『知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版』から抜粋し、そんな“人生後半の落とし穴”を避けるための「目からウロコ」な情報を、お届けします。

そんな手があったのか! 社会保険料も税金も減らせる「定年退職後の働き方」の裏ワザPhoto: Adobe Stock

バリバリ働いても、手取りが減らないようにする裏ワザ

 本書では、もらえる年金や給付金などを減らさないためには、さまざまな働き方を提案しています。

 しかし手取りをなるべく減らさないために、働き方や給与を調整するのもいいのですが、そんなこと気にせずに、良い条件を提示されたなら、たくさんの給与をもらって働きたい、と思う方もいらっしゃると思います。そんな方におすすめの方法があります。

 それは、給与の一部を退職金に回してもらうという方法です。

 たとえば、再就職後の給与が月40万円、「老齢厚生年金」が15万円の場合で考えてみましょう。

 40万円を給与でもらうと年金が月2万円カットされてしまいますが、月給を32万円にして、残りの8万円を退職金に回してもらえれば、年金はカットされません。しかも、退職金には社会保険料がかかりませんし、税金も安いというメリットがあります。

 このケースなら、社会保険料と税金の差額だけで、年間26万円以上おトクになります。しかも、「老齢厚生年金」がカットされない分をプラスすると、年間50万円ほど手取りを増やせます。

 退職金をもらう時には税金がかかりますが、本書でも説明している通り、退職金は大変優遇されていますし、社会保険料はかかりません。

 仮に5年間勤務し、退職金に回した分をもらうとすると、8万円×12か月×5年間=480万円になります。この480万円の退職金にかかる税金は、所得税と住民税合計で約21万円です。5年間で社会保険料と税金の差額だけで130万円ほどおトクになっているので、退職金で21万円税金を払ってもしっかり効果はあります!

 ちなみに、退職後の「失業手当」や「高年齢求職者給付金」は、退職前6か月の給与をもとに計算されます。

 給与が40万円の場合と32万円の場合では、「失業手当」も「高年齢求職者給付金」も支給額の差は数万円程度ですから、失業手当などを含めて考えても、給与の一部を退職金に回したほうがおトクです。

給与の一部を退職金にする大きなメリットとは?

 仮に「老齢厚生年金」はまだもらわないので関係がない、という場合でも給与の一部を退職金に回すメリットは他にもあります。

 それが、本書のp110で説明した「高年齢雇用継続基本給付金」です。60歳以降の給与が60歳時点の給与と比べ、75%未満に下がっている場合に受けられる給付金で、ダウン率が高いほど給付率が上がり最大で新給与の15%を受給できます。給与の一部を退職金に回す方法を利用できれば、この給付金をより多く受給できる可能性があるというわけです。

 このように、メリットの多い方法ですが、これを実現するためには、再就職時の給与の取り決め時にしっかりと交渉する必要があります。言い出しにくいと思われるかもしれませんが、給与を退職金に回すと、会社側にとっても負担する社会保険料が減るというメリットがありますから、悪い話ではありません。

 あとは、後回しにした退職金をちゃんと受け取れるように、雇用契約書などできちんと取り決めをしておくことをおすすめします。

*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。一部、情報はアップデートしています。