今「がん」に関する情報があふれています。芸能人でもがんを公表する人がいるため、ある意味、よく聞く病気になりました。しかし、情報があふれているゆえに、本当に正しい情報はなんなのか……迷う人が多いのも事実です。
そこで、がん患者さんに日々接している現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』を発売。この連載では、その本の中から気になるところを紹介していきます。

一般的になってきた
「セカンドオピニオン」

 最近のがんの治療では、「セカンドオピニオン」という言葉を聞くのが当たり前になりました。

 セカンドオピニオンは、担当の医師が見立てた「1番目の」診断や治療方針に対して、別の医療機関の医師に「2番目」の意見を聞くことです。患者さんが、自ら治療法を選択するときに、科学的根拠に基づいた知見から第三者の医師に意見をいってもらうものを指します。これは患者さんの権利として認められており、どんな患者さんでも受けることができるものです。

 現在、多くのがんの治療は、疾患ごとに推奨される標準的な治療がほぼ確立しており、それぞれ、がんの部位やステージごとに、手術の方法、放射線の照射回数、使用する抗がん剤の種類、治療の組み合わせ方などが決まっています。ただし、患者さんの状態によっては必ずしもこれらの治療が当てはまらないこともあります。

 というのは、患者さんごとに状況は千差万別であり、標準的な治療に準拠しての治療に8割方は合致しても、残りの2割の「調整」の部分で白黒はっきり決められない要素が存在するからです。

 このため、医師の間でも意見が分かれることがあり、がん専門病院では「腫瘍カンファレンス」と呼ばれる症例検討の会議が持たれ、外科・内科・放射線科・病理科、その他医療スタッフがそれぞれの専門家としての意見を交わし、患者さんに提案する治療について合議します。

 たとえば、同じがんの患者さんに対する治療でも、「抗がん剤治療を先にして、腫瘍を小さくしてから切除術をしたほうがいい」という意見に対し、「まずは切除してから、抗がん剤治療をしたほうがいい」という意見が出ることはよくあります。

 患者さんに、この合議の結果に基づいてもっとも推奨できる選択肢を提案しますが、それでも複数の治療方法が提示されることはありえます。

 そうなった場合に、「この中から選んでください」といわれても、「どの治療法を選んだらいいのかわからない。」と悩む患者さんがいるのは当然のことです。

 また、担当の医師から説明された診断や治療方針が、「どうも納得いかない」「他に治療法はないのか」と思う患者さんもいるでしょう。

 具体的には「仕事との兼ね合いで、入院期間が短い治療法を探したい」という人もいるかもしれません。あるいは、「先生の言っている治療法で納得もいっているけれども、他の先生からも『それでいいよ』という後押しがあると、より安心して前向きに治療が受けられる気がする」ということもあるでしょう。

 その時に活用したいのがセカンドオピニオンです。