2015年の罹患者は「10年前の3倍」に増加、今や胃がん、肺がんを抜いて、男性のがん罹患率トップに躍り出たのが前立腺がん。その実態についても現状についても、正しい理解は進んでいない。「男性機能」との関係をはじめ、男性にとって関心が高いが、なかには「都市伝説」的な怪しい話もある。それらはどこまで本当なのか、前立腺がん治療の名医として知られる、東京慈恵会医科大学泌尿器科の頴川晋(えがわ・しん)主任教授に聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

オトコらしさは温存できる?

前立腺がんの「名医」として知られる東京慈恵会医科大学泌尿器科の頴川晋主任教授 Photo by Hiromi Kihra

「前立腺を全摘したら勃たなくなるっていうじゃない。俺も覚悟していたんだがね、驚いたよ。全然、大丈夫なんだなぁこれが。フフフ(笑)」

 中高年男性ばかりの宴席。

 前立腺がん治療のための手術を終え、元気に退院した男性(60代)は、声を潜めながらもドヤ顔で語った。手術支援ロボット「ダヴィンチ」による手術だったお陰か、手術の翌日から歩行もOK。回復の早さに気をよくした男性は上機嫌だった。

「へぇ、それはよかったですね。そんなこともあるんですねぇ。普通そうなんですか」

 メンバー中では一番年若い50代が目を丸くして聞く。

「どうだろうね。先生には、『男性機能だけは残してください。でなければ手術受けません』ってお願いしたんだけどね。まだオトコでいたいからさ(笑)」

 うんうんと頷く男たち。

 (全摘してもEDにならないなら安心)とばかりに、前立腺がんに対する恐怖が不思議と和らぐのだった。

 さて、本当のところ、前立腺全摘は、男性機能にどれほど影響するのだろうか?