西欧=文明、日本=非文明

 彼らは、何よりも先ず武器、軍艦の強弱、つまりは軍事力、それを産み出した工業力の差異を以て彼我(ひが)の優劣を痛感したに違いない。

 そして、この「工業力の優位」というほとんど一点の差異を以て、西欧=文明、日本=非文明と自らの世界的な位置づけを明快に行ったのである。

 そこには、例えば芸術的独創性や学識レベルといったソフト的な要素も併せて意識されたという形跡は全くなく、彼らはただ西欧の大砲や小銃、軍艦に対する恐怖や尊崇、或いはコンプレックスといった感情に支配されて、自国を非文明、野蛮と貶(おとし)めたとしか思えないのだ。

 この感情が、直近の前時代である江戸期を、ひいては江戸期以前の我が国そのものを全否定することに繋がったと観察される。