2011年3月27日、米フロリダ州セント・ピータースバーグ。その市街地の中心で、轟音が響き渡った。インディカーシリーズ第1戦が開幕したのだ。
ゼッケン5番、佐藤琢磨選手のマシンには、東日本大震災の被災者を支援するためのチャリティ活動である「With you JAPAN」の大きなロゴが見えた。
このレースへの出場マシンはワンメイク(同じ形式のマシン)で、エンジンはホンダ製のV型8気筒・3.5リッター/最高出力約650馬力だ。ホンダは今回のレーススポンサーであり、レースの先導車(ペースカー)には同社の燃料電池車「FCXクラリティ」が使用された。また、場内中央広場の仮設テントには、北米で発売されているホンダ関連の自動車、大型二輪車、船舶用エンジンが展示され、さながら“青空自動車ショー”の趣であった。
テント内にいた北米ホンダ関係者は、東日本大震災の影響について「他社ではディーラーへの新車供給が一時停止されたり、ゼネラル・モーターズ(GM)が工場の操業を一時停止したりと、(日本で起きた)地震と津波の影響がアメリカでこれほど大きくなるとは想像していなかった。当社が今後どのように対応するかは分からない」と話した。
その2日後、アメリカンホンダ(ホンダの北米事業本体)は、大震災による部品調達の遅れにより、北米各地の車両組み立て工場で3月30日から減産を行うと発表した。
対象となる工場は、米オハイオ州メリーズビル工場、同イーストリバティ工場、インディアナ州グリーンバーグ工場、アラバマ州リンカーン工場、カナダ・オンタリオ州アリストン工場、メキシコ・エルサルト工場だ。ホンダは北米生産車における部品供給メーカーの数を600社強と説明。部品の約80%が北米内で調達されており、日本などから輸入している残りの約20%の部品の供給が滞っているとした。
東日本大震災の影響は、前述のとおり、米自動車メーカーにも及んだ。GMは、3月21日から27日のあいだ、ルイジアナ州シュリブポート工場の稼動を停止した(28日に再開)。稼働停止の理由は日系部品メーカーからの供給が滞ったためとしたが、対象となる部品メーカーの名称は公開していない。また稼動再開時にその対象部品の日本からの供給が再開したのか、それとも北米内の他社から調達したのかも明らかにしていない。