さて、これが可能だとすると、これまで言われてきた「10年かかってやっと入口」といった長い、長い修業期間の意味は何だったのでしょうか?無駄な時間だったのでしょうか?

 もちろん、そうは思いません。寿司職人になろうと志すのは多くの場合、高校を卒業したばかりの18歳前後でしょう。そうすると、10年修業しても28歳。キャリア成長論でいうと、やっとプロフェッショナルとしての旗印を掲げる入口です。

 (寿司)職人10年修業説はこんなところからきているのではないでしょうか。18歳の少年が一人前になるには寿司の技術だけではなく、人間としての成長や社会人としての常識を身につける時間も必要なのだと思います。

 そして、寿司の基本的な、仕事で使える基礎技術だけに絞るなら「寿司和食インターナショナルアカデミー」のカリキュラムは妥当なのでしょう。そして、従来型の寿司職人としての一人前になるための10年修業を、社会人基礎・料理人基礎と寿司技術の両方の習得にかかる時間だと考えれば納得がいくはずです。徒弟制も寿司アカデミーもそもそも狙いが異なるのだから、双方共に意味があることになります。

 さて、ここでもう一度我々の分野でのプロフェッショナルのキャリア形成に戻りましょう。

 我々が「辛く長かった修業時代」と言う時、それは寿司職人の社会人基礎・料理人基礎を身につけるための10年間のことを指しているのでしょうか、それとも寿司アカデミーのような実践的カリキュラムのことを指しているのでしょうか。多分、前者を指しているのだと思います。

 ということは、40歳になってすでに一角のプロになっている方が、別のプロフェッショナリティを身につけようとした時に、何も社会人基礎の10年間からやり直す必要はないのです。ここはすっ飛ばして、寿司和食インターナショナルアカデミーと同じ短期間修業をまず行い、その後は基礎技術をベースに独自の境地を磨いていけばいいのです。

40歳から新たな分野で
プロになったサラリーマン

 よくテレビで、芸達者な役者さんや歌手やお笑い芸人の登場する番組を観ることがあります。たとえば元々お笑い芸人なのに芝居もうまいし歌も歌える。少々硬派な番組の司会も巧みにこなすし、絵を描けばあっという間に仕上げ、出来栄えはプロ並み…。そんな方がいます。

 私たちはそんな方を見て特別な人だと思いがちですが、そうではないと思います。私は多くの方がマルチなタレント(才能)を持っていると思っています。今あるプロフェッショナリティのベースにある社会人基礎力が充実してさえいれば、その上にいくつもの柱を新たに立てることは、それほど難しくないのではないかと思うのです。