東日本大震災による生産設備の損傷、その後の電力不足も加わり、電子部品の供給に対する不安は、全世界に広がっている。しかし、慌てる必要はない。深刻な電子部品不足は、企業体質を見違えるほど強くできるチャンスでもあるのだ。
世界に波及する
深刻な電子部品不足
甚大な被害をもたらした東日本大震災は、日本の電子部品の生産に深刻な打撃を与えている。ご承知のように、東北・北関東地域は、電子部品、半導体の一大生産地である。東日本に拠点を置いている電子部品メーカー各社は、生産設備の損傷に加えて、電力不足による生産稼働時間の短縮などを余儀なくされ、電子部品の供給に対する不安は、全世界に広がっている。
このため、世界中のエレクトロニクス機器メーカーは、必要な部品の確保に奔走している。なかには、現金で部品を調達している海外大手企業もあると聞く。数百点、数千点の部品点数からなる製品も、たった一つの部品不足で、製造できなくなってしまう。そのダメージは、世界経済に対する影響さえ、ささやかれているほどの深刻さだ。
電子部品メーカー各社は復旧に全力を挙げ、操業を再開するメーカーも増えてきている。だが、計画停電などの影響で、比較的長時間のプロセスを必要とする工程がネックとなり、被災していない工場でさえ、操業がままならない状況が続いているところも少なくない。それが、電子部品供給不足の不安をより一層あおる。セットメーカー各社は、長年のコスト削減努力や、ジャストインタイムなどの調達手法で、部品の徹底的な在庫削減を実現している。
したがって、普段から必要最低限の部品しか抱えていないので部品に余裕がない。部品供給の停止は、すなわち生産停止を意味する。そのため企業の業績に深刻な影響をもたらすことになる。このため、必要な部品の確保は、各社の最優先の経営課題になっている。
財務諸表の
棚卸し在庫をチェックする
確かに部品の在庫は底をつきつつあると思うが、ここで1つ確認してほしいことがある。完成品の在庫である。財務諸表の棚卸し在庫を確認すると、一般にセットメーカーの在庫は数ヵ月分ある。たとえば、棚卸し在庫で完成品が2ヵ月分あるなら、平均で2ヵ月分の市場の供給には困らないことになる。