日銀は足元の景気判断を引き下げ

 今月6-7日、日銀は金融政策決定会合を終えた。日銀は足元の景気について「震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある」とし、前回3月の「改善テンポの鈍化した状態から脱しつつある」から判断を引き下げた。

 すなわち「震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内民間需要にも相応の影響が及んでいる」(下線筆者)とした。

 あえて「一部の」と書いているところから、少なくとも現時点で日銀は、震災が幅広い業種を巻き込むマクロ型の景気後退を誘発するとは見ていないようだ。

 一般に、一部の業種をサポートする政策は経済主体間での所得再分配を伴う。そのため、金融政策(日銀)ではなく財政政策(政府)で対応すべき課題とされる。こうした考え方が今月の決定会合の背景にあったとすれば、日銀が追加緩和に動かなかったことも理解できる。

 物価については「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続けている」という判断を据え置いた。

 震災後の金融については「金融機能は維持されており、資金決済の円滑も確保されている」。金融市場も「全体として安定している」。ただし、「震災後、中小企業を中心に、一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる」との判断を加えた。

 この判断が、次に触れる「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」の必要性の背景にある。