今では考えられない「業界の非常識」とは?
街頭でモデムを配る手法は、社内で「パラソル」と呼ばれていました。
商店街やショッピングモール、駅前などの一画にある3坪程度の空きスペースを借り、パラソルを立てて簡易的な販売所を作り、その近辺でどんどんモデムを配る。
だから「パラソル」というわけです。
今でこそ、他の通信事業会社も同じような販促を行っていますが、当時としては完全に「常識外れ」としか言いようがないものでした。
通信業界は「通話品質が安定しないサービスは提供できない」を常識とするなど、いわば〝お行儀のいい〟世界です。
販売窓口を設けるなら、ドコモショップのように自社の店舗を構えるのが当たり前。それが通信事業者として顧客からの信頼に応えるやり方であり、そこからはみ出す販促や販売手法など考えもしなかったのでしょう。
そもそもNTTグループの寡占市場が長らく続いてきたので、事業会社の側からアグレッシブに営業するという概念自体がなかったのかもしれません。
ところがソフトバンクは、普段は焼き鳥の屋台や野菜の即売所などが出店しているような小さなレンタルスペースで、自社サービスを売りました。しかも若い女性たちをたくさん使って、派手に人目を引く販促方法をやろうというのですから、業界の常識からすればあり得ないことです。