変化した前提条件は、大きく2つある。
1つは、急速な長寿化である。
1945年に50才だった平均寿命が、わずか55年後の2000年には80才と、わずか55年間で寿命は30年延びた。ギネス並みの伸び方である。このため、年金の支給期間も5年程度から約20年と大幅に伸びた。財源が足りなくなるのは当たり前である。
もう1つは、グローバル化だ。
戦後、ここまでグローバル化が進展し、人の行き来が活発になるとは誰も想像しなかった。大リーグで活躍するイチロー(鈴木一朗・米シアトルマリナーズ外野手)をはじめ、優秀な人材はみな、海外に行って稼ぐ時代になった。若いうちは海外で稼ぎ、老後の社会保障だけ日本で受けたいという人も今後はますます増えるだろう。しかし、その手当て(市民権課税の導入など)はまだできていない。
現在の年金制度は、国家の仕切りが強かった第一次世界大戦に向かう時代につくられた。帝国主義の権化だったビスマルクという人が考案した制度である。国境の認識が薄れつつある今、当時の概念が基礎となる制度が通用するとは思えない。
税金は、一部の本当に困った人に分配するべきなのだ。今の国家が本当にやれることと、やれないことを峻別し、国の役割や税収の使い道を見直すべきときである。それが、大震災で生き残った僕らの使命だと、思いを強くしている。特に若い人にも、自分たちの社会を自分たちでつくるんだ、という生き甲斐を持って進んでもらいたい。