初めての試作品発表会は失望のうちに終わった。オリジナリティがまったくない。何の変哲もないまんじゅうで、全国で通用する菓子どころではなかった。しかし、十河会長の厳しい言葉を受け、もう一度試作品に挑戦することになった。

「お遍路さん、しませんか」。8月のある日、私は商工会の永峰指導員に話を持ちかけた。

「大変ですよ。予算もつかないですし」。いつもの淡々とした口調で永峰指導員は答えた。

「かまいません。今、お菓子事業者さんは四苦八苦して試作品をつくってくれているんです。その間に、私たちで八十八カ寺、回りましょう」

 プロジェクトの成功を祈るのはもちろんだったが、なによりお遍路にまつわるお菓子をつくる以上、実際に自分たちでも回ってみるべきだと思ったのだ。その土産菓子を買ってくださる人、そのお土産を受け取る人の願いが叶うよう、祈りを込めて。

 最初は二人で回るつもりだったが、幸いなことに、カメラマンの岩城文雄氏が日本一の土産品を作るというプロジェクトの志に賛同してくれ、なんと、全行程を記録してくれることになった。

 スタート地点は、徳島県にある一番札所、霊山寺だ。そこで白衣、半袈裟、数珠、金剛杖、笠、お経、線香、ろうそくなど、必要なものを買い揃える。これらを身につけると、お遍路姿の出来上がりだ。

見よう見まねで、お参りの作法に従う(撮影:すべて岩城文雄)

 お参りには作法がある。まず、山門の前でお辞儀する。門をくぐったら、手を清める。池の上にかかった橋を通るときは、杖をついてはいけない。弘法大師が橋の下で休んでいるかもしれないからだそうだ。