5回目のお遍路を迎えた晩秋、嬉しいことが起きた。二人の菓子事業者が参加してくれたのだ。
一人は、若手の洋菓子屋さん。東京の老舗和菓子屋と洋菓子屋で修行を積んだ腕のいい職人さんだ。初会合で私に強烈なパンチを見舞ってくれたが、以降は熱心にアイデアを提案してくれている。もう一人は年配の和菓子屋さんで、いつも絶妙なタイミングで救いの手を差し伸べてくれた。
みんなで並んでお参りしていると、少しずつ、心が通い合い始めた気がした。帰りがけに、「佐々木先生も東京から来て、わざわざ自分らのためにお遍路を回ってくれていたんですね……」と言われた時は、目頭がジーンと熱くなった。
お遍路を通じて、永峰指導員の心境も変わったようだ。「初めは、何でこんなことにまで付き合わされるのかと思っていたんです。でも、本当にやってよかったです」
お遍路の効果を実感
しかし、一番変わったのは、私自身だった。自分なりに精一杯頑張ってきたつもりだったが、それは、「引き受けたからには結果を出したい」という自意識によるものだった。つまり、自分のためだったのだ。しかし、お遍路を回るうちに、自然と「みんなのため」に意識が向くようになった。
寺の立地は、どこも風の通り道になっている。長い階段を上がる時、ふと、頭上を龍が通り抜けていくような感覚を味わうこともあった。
進めば進むほど、小さな自分の存在に拘泥することがなくなり、代わりに、周囲の人々や自然に対する感謝の気持ちで満たされていく。
これがお遍路の効果か、と感心した。そして改めて「みんなのためになること」を考えようと、意を新たにした。
(本連載は毎週月曜日に掲載します。次回は6月13日です)