なぜ、書くことが大切なのか? 記録にはどんな意味があるのか? 35万部突破の『働く君に贈る25の言葉』の著者・佐々木常夫さんと、シリーズ累計50万部突破『人生は1冊のノートにまとめなさい』の著者・奥野宣之さんが語る、人生をマネジメントする「積極的メモ」のすすめ。

 

この記事は奥野氏の新刊書籍の刊行を記念して再掲載しています。
『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』奥野宣之・著
本体1400円+税/ダイヤモンド社

 

書くと問題の原因が見えてくる
よい習慣は才能を超える

奥野:佐々木さんはご著書『働く君に贈る25の言葉』の中でも記録の大切さについて書かれていますが、そもそも、記録を意識するようになったきっかけは何だったのでしょうか。

佐々木:きっかけは大学での講義のメモですね。私は先生が言ったことをほとんど書いていたんですが、誰よりも多く書くものだから、試験前になるとそのノートはみんなから引っ張りだこになっていたんです。

奥野:それはすごいですね。僕が今でこそ「ライフログノート」という習慣を持っているけれど、学生時代、ほとんどノートを取らなかったのとは対称的ですね。

 「ほとんど書いていた」とは、あとで読み返してもわかるように、授業をそのままノートに再現していたということでしょうか?

ささき・つねお/東レ経営研究所特別顧問。1944年秋田市生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年東レ入社。病に倒れた妻と障害のある子どもを抱えながら仕事と家庭生活を両立させ、2001年、東レ同期トップで取締役となり、03年より東レ経営研究所社長。10年より現職。ベストセラーとなった『働く君に贈る25の言葉』(WAVE出版)では、記録の大切さについても書かれている。

佐々木:そうですね。それでメモすることの重要さに気づいて、会社に入ったあとも積極的にメモを取るようになりました。打ち合わせをしている時も、相手が話したことはほとんど全部書いていましたね。

 メモすることに対して問題意識を持ったのは、社会人になって数年たったときかな。仕事で上手くいかないことがあったり、ミスしたりすると、上から怒られるじゃないですか。その時に、怒られたことをメモして、なぜそういうことが起きたのかを反省しようと思ったのがきっかけです。

奥野:私も『人生は1冊のノートにまとめなさい』という本に、「体験の使い捨てをしない」という言い方で、そうしたミスや反省を積極的に記録しておくように書いたのですが、佐々木さんも、メモすることで、同じ失敗を繰り返さないように、なぜミスが起こったのかを分析したり、次はどうすればいいのかを考えるようにするということでしょうか?

佐々木:書いてみると、原因がよくわかるんです。ノートを読み返せば反省も倍になるからですね。単に反省しているだけだとすぐに忘れてしまって身に付きませんが、書くと覚える。覚えると使う。使うと身に付くという好循環が生まれるんです。

おくの・のぶゆき/作家。 1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部を卒業後、新聞社等を経て、『情報は1冊のノートにまとめなさい』でデビュー。「100円ノート整理術」はシリーズ累計50万部を超え、ノート術ブームの火つけ役となる。メモやノートの活用術から知的生産術までわかりやすく書き下ろした著書は、若手ビジネスパーソンを中心に支持を集めている。

奥野:記録と改善の好循環については、ご著書の『働く君に贈る25の言葉』でも書かれていましたね。

 私も本の中で、まずは何を食べたのか、何時に寝たのかといったことから積極的にメモすること、次に、記憶のカギになるようなものを貼っておくこと、そして書いたものをあとで読み返すことの3つの重要性を主張したのですが、読者の方からは、なかなか日常的に記録したり参照したりするのは難しいと言われたりもします。どうすれば続けられるのでしょうか?

佐々木:慣れですよ。なんでも習慣になればなんてことない。今までほとんどメモしたことのない人が書けと言われても、それは大変だと思うかもしれないけど、慣れちゃうと別になんてことないです。書くことに慣れるかどうかの問題だと思います。

奥野:まずは、ああだこうだと考えずにとにかくやってみて、書くことをあたりまえの習慣にするしかないということでしょうか?

佐々木:そうですね。『働く君に贈る25の言葉』という本にも書きましたが、「よい習慣は才能を超える」ということなんです。メモを取ることが習慣になれば、別に苦痛でもなんでもないんです。習慣になれば、いいことばかりですよ。